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132年間の連勝記録を打ち破ったのは…ヨット界の「裸足の天才」による、強敵・アメリカに勝つための“ありえない”発明

2022/11/23
 

 国際スポーツで史上最長の連勝記録をご存じだろうか。近代五輪やサッカーW杯より長い歴史を持つ国際ヨットレース「アメリカズカップ」で米国は132年もの間、勝ち続けた。連勝記録の始まりは1851年。あの南北戦争(1861年)より前から勝ちっぱなしという途方もない偉業だ。では、絶対王者・米国を倒し歴史を変えた者たちとは何者なのか。その運命の第25回大会(1983年)に迫ったドキュメンタリーが『Untold:世紀のヨットレース』(ネットフリックスで配信中)だ。

「世界王者には変わり者が多い。常識を覆せなければ偉業は達成できない」

 そう語るオーストラリアの艇長(スキッパー)ジョン・バートランドは1974年から3大会連続で米国に完敗していた。技術力・資金力・組織力で圧倒的な差を痛感した彼は敵国のマサチューセッツ工科大学で海洋工学を学び、豪州の不動産王アラン・ボンドをオーナーに迎えた。クルーにはヨットとは無縁のエンジニアや学校教師を招いた。狙いは米国チームを出し抜けるような聡明で教養ある人材を集めること。中でも最も重要な艇の設計を“裸足の天才”ベン・レクセンに託した。ジョンは彼をこう評す。

「賢いが危険な男。我が国のレオナルド・ダ・ヴィンチだ」

©佐々木健一

 ベンは9歳から12歳まで3年間しか学校教育を受けておらず、風体は路上生活者のよう。一方で、発想が自由で枠にはまらない天賦の才の持ち主だった。莫大な資金を投じ、技術の粋を集めて作られる艇の設計を豪州チームはこの男に一任した。そして、見事にベンは常識がひっくり返る革新的な発明をもたらした。

「“あり得ない”と思ったよ」

 と当時のクルーが振り返る。艇のある部分が見たこともない形状をしていたのだ。当時は邪道とも言える型破りな艇で大勝負に挑んだ彼ら。まるで漫画のような登場人物と最後まで手に汗握る白熱のレース展開に胸が熱くなる。

INFORMATION

『Untold:世紀のヨットレース』
https://www.netflix.com/jp/title/81026435

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