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YouTubeの格闘技系コンテンツは人気だが…日本ランク2位でも年収は20万円「キックボクシング業界」の厳しすぎる現実

source : 提携メディア

genre : エンタメ, スポーツ, 働き方

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引退後の児嶋氏は、レフェリーとしてキックボクシング業界に携わりながら、豚革を取り扱うアパレルブランド「Sai」を立ち上げた。2022年にはクラウドファンディング「CAMPFIRE」を運営する会社から豚革の可能性が評価され、CAMPFIRE賞を受け、2023年には墨田区に常設店もオープンした。

始めたときから引退後のことを考えた方がいい

「キックボクシングの経験は今の仕事にいきています。初めてジムに行ったときは周りから笑われて、全く相手にされませんでした。でも豚革事業は、誰も僕のことを知らない状況でも、アパレルグッズが置いてあるだけで『なんだろう~?』と足を止めてくれます。それだけで嬉しいと思えるのは、キックボクシングの経験があったからです」

一方で、反省すべき点もあると言う。

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「もちろんキックボクシングをやっていたことに後悔は一切ありません。でもキックボクシング一本で食べていく気がないなら『もっと未来を考えておけ』と過去の自分に言いたいです。僕は運よく豚革事業を始められましたが、今思うともっと前からビジネスについて勉強しておくべきでした」

児嶋氏がキックボクシングを始めたのは2013年。豚革ブランドを立ち上げようと決めたのは2021年。あるオンラインサロンに入って、アパレルについて勉強したことがきっかけだ。それまでの間は特に何も考えずに、派遣会社に紹介された仕事をこなしたり、友人の職場で働いたりしていた。

「キックボクサーは、引退したあとの人生の方が遥かに長い。変な言い方になりますが、キックボクシングを始めたときから引退後のことを考えた方がいいと思います。『もっと練習に打ち込め!』と言われるかもしれませんが、練習しながらでも将来を考えることならできます。これは僕自身の反省から言えることです」

児嶋氏の現役時代の話を聞くと、プロ格闘家の大変さが分かる。本業が終わったあと、クタクタになりながら毎日ハードな練習をして、試合前には過酷な減量も待っている。まさに血のにじむような努力。それを知ってから、命を削る彼らの試合をもっと観たくなり、心から応援したいと思った。

中村 昌弘(なかむら・まさひろ)
ライター
1985年生まれ、埼玉県出身。立教大学文学部日本文学科を卒業後、不動産会社へ就職。その後、人材紹介会社を経て、2016年に独立しライターの道へ。
YouTubeの格闘技系コンテンツは人気だが…日本ランク2位でも年収は20万円「キックボクシング業界」の厳しすぎる現実

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