「原野商法の二次被害」では、基本的に「負動産」の所有者に対し、何かしらの理由付けで手持ちの物件が高値で売却できるとそそのかし、不当な手数料を巻き上げるという手口が一般的だが、湯沢のマンションの所有者にはそれは通用しない。市場価格が暴落し、10万円でも買い手がつかない部屋が続出していることは所有者も百も承知である。
価格が付かないのに、月々の管理費や固定資産税などの持ち出しは常に発生しているわけで、当然多くの所有者は過去に売却も試みたであろうが、地元仲介業者から冷徹な査定額を聞かされているはずで、高値で売れると言われても、よほどの楽天家でない限り鵜吞みにはしないだろう。
「負動産」の所有者にダイレクトメールが送り付けられ…
そんな所有者に対し、近年盛んに送り付けられてくるダイレクトメールは、従来のような高値売却を誘うものではなく、お持ちの「負動産」を引き取ります、と呼び掛けるものだ。ダイレクトメールには、その所有者が持つ物件が、いかに処分が困難で価値がなく、所有し続けるだけで負担になるものか長々と書き連ねられている。それらの物件を子供や孫に相続させるくらいなら、お金を払ってでも処分しませんかと勧めている。
もちろん無料で引き取ってもらえるわけではない。ダイレクトメールには「物件処分費用」として数十万円の金額が書かれているほか、数年分の管理費や固定資産税などの固定費の納入が必要になる。実際に、前所有者がこの手の業者に引き取りを依頼してしまったあるマンションの管理組合によれば、数百万円に及ぶ処分費用を請求されるケースもあるとのことだ。
こうした「負動産」の引き取りサービスは近年急増している。しかし、前述したように、そのすべてがすべて、悪徳業者が手掛けているというわけではない。近年では、所有者側が一定の金銭的負担を覚悟しなければ、所有権を手放せなくなっている不動産が増加しているのは紛れもない事実である。
無償での譲渡を行うにせよ、例えば所有権移転登記手続きのための司法書士への手数料や、引き取り手を探す仲介業者の手数料は発生するわけで、一般の不動産売買ではそれは買主が負担するのが通例だが(仲介手数料は売主も負担するが)、それすらもすべて「売主」側が負担し、引き取り手側に確実に金銭的負担のない形にしなければ、まったく処分できる見込みも立てられないような物件も確かにある。
有償引き取りサービス自体は、むしろ近年の不動産事情を考えればその出現は必然であったと言っていいだろう。