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「あなたが弾くのはいつも明るく楽しい音だよね」

 モーツァルトは生涯を通して、困窮している中にも常に軽やかな楽しみを求め続けた人でした。その生き方と呼応するかのように、彼の曲は、たとえば《第24番》のように重いコンツェルトであっても、どこかに華やかな遊び心が潜んでいるのです。その性向が、わたしにはたいへん親しみが持てます。日本では、たとえばショパンのように、哀愁をどこまでも切なく歌い上げる曲のほうにシンパシーを感じる方も多いかもしれません。けれど、わたしは両者を比べるとするならば、圧倒的にモーツァルト寄りの人間のようなのです。

 オプティミストたるわたしの生来の性質は、音楽にもよく表れているようですね。「あなたが弾くのはいつも明るく楽しい音だよね」と、よく言われます。

 それでいい、とわたしは考えています。明るい音でみんなが幸せな気持ちになれたら、それも素敵なことじゃないかと思うのです。

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 ただ、だれもがそう感じるわけではないことも、よく知っています。昔から、「いつも明るく浮わついた音だ」と評されてきました。そんなとき、必ず言われるのです。「きみは真に悲しい経験をしていないからだ」と。そう言われればその通りです。たしかにわたしはこれまで、幸せなことに、生きるか死ぬかの争いの渦中に身を置いたこともなければ、飢えや渇きに遭った経験もありません。