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琴音が語った「街娼になったきっかけ」はひとつの事象にすぎない。むしろASDの症状のひとつである「こだわり行動」が、多分に外交的で攻撃的な琴音と、セックスワークとを結びつけたのではと思えてくるのだ。

「でもさあ、その私がこうやって自立して、仕事のメインは売春だけど細々とでも舞台もやってるのって、すごいよね。うん、こんなにいい仕事ないと思う。学も教養もなく手っ取り早く稼げるし」

自分の天職を見つけた彼女はまばゆいばかりに輝いていた、というのは言い過ぎかもしれないが、いまを照らして「私は売春に救われた」と語る姿は、過去を話すときよりずいぶん希望に満ちていた。(後編に続く)

高木 瑞穂(たかぎ・みずほ)
ノンフィクションライター
1976年生まれ。月刊誌編集長、週刊誌記者などを経てフリーに。主に社会・風俗の犯罪事件を取材・執筆。著書に『売春島「最後の桃源郷」渡鹿野島ルポ』『東日本大震災 東京電力「黒い賠償」の真実』『覚醒剤アンダーグラウンド「日本の覚醒剤流通の全てを知り尽くした男」』(彩図社)、『裏オプ JKビジネスを天国と呼ぶ“女子高生”12人の生告白』(大洋図書)、『日影のこえ』(共著、鉄人社)ほか。