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「元気が出るんだったら、どこへでも行きます」

さだ あのときは、THE ALFEEの坂崎幸之助に教えてもらった、二つ折りにして持ち歩けるギターをリュックみたいに背負って、「歌ってくれ」と言われたら開いて歌って回りました。そして「ああ、ひらがなの“さだまさし”はこういうときに結構喜ばれるんだ、いまこそ“さだまさし”の使い時だ」と思いました。

 僕らは何もして差し上げられないけれど、僕が行って歌を歌ったり、トークをしたりするだけで元気が出るんだったら、いくらでもしますし、どこへでも行きます。それに、「何が欲しい? 何が足りない?」と聞いて回っていると、「さだまさしだ」とみんなが寄ってきて、いろいろなことが聞けたりする。そういうことをやっていくうちに、その後も土地の人とだんだん繋がっちゃうのね。

 でも箭内さんみたいに、実際に現場を知っている人には現場を知っている人の支援の仕方があるよね。

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「ヒット曲はこのときのためにある」と言われ勇気になった

箭内 そうですね。僕は福島県郡山市出身。福島県は、東日本大震災で大きなダメージを受けました。でも震災直後にプロ野球の巨人×ヤクルト戦が郡山で行われ、そこで当時ヤクルトにいた青木(宣親)選手に会ったときに、「野球をしていてお客さんがこんなに楽しそうに観てくれたのは初めてです」と言われたんです。

 それを聞くまで「音楽は無力だ」という声も聞いたけど、人間には大きな声で笑ったり、大きな声で歌ったり、ときに泣いたり叫んだりというエンターテイメントが必要なんだと確信しました。さださんは「さだまさしの使い方」とおっしゃいましたけど、僕はさださんから「ヒット曲っていうのはこのときのためにある」と言われたこともあって。それがすごく勇気になりました。

箭内道彦さん

さだ 僕は家族の歌ばっかり歌って、ヒット曲もそういう歌が多いから、みんな他人事じゃないんだよね。どこか必ず「自分事」になるので、被災した人たちに届けやすかったというのはあると思います。

案山子(かかし)』を聞いて「元気でいるか」って言われるだけで故郷や家族を思い出す。『秋桜(コスモス)』でお母さんのこと思うだけで涙が出ることもある。『関白宣言』は「何で飯を作る人が私で食べる人があなたなの」って文句言ってたけど、実は2人でいることそのものが幸せだったんだと気がついたり。だから僕はすごくヒット曲に感謝しています。