2024年3月30、31日の両日にさいたまスーパーアリーナで「風とロック さいしょでさいごの スーパーアリーナ “FURUSATO” 箭内道彦60年記念企画」を開催する箭内道彦さん。東京藝術大学で「電気代を稼ぐコンサート」を開いたり、芸術×ビジネスがテーマのバラエティ番組『藝大よ、地球を救え。』を企画するなど、アイデアを次々と形にしています。誕生日も血液型も同じというお2人の出会い、そしてこれからを語っていただきました。(全2回の2回目。前編を読む)

箭内道彦さん(左)とさだまさしさん

箭内さんは「きちんとしてない仕事もしている面白い人」

さだまさしさん(以下、さだ) 僕の2014年のアルバム『第二楽章』のディレクションを、箭内さんが担当してくれたのが一緒に仕事をした最初だよね。レコード会社と「今度のジャケットをどうするか」と相談していく中で、僕が「きちんとした仕事をしているんだけど、きちんとしてない仕事もしている面白い人を探しそう」と話していたら箭内さんにたどり着いたの。

 僕のフィールドとは違うフィールドでありながら、音楽も分かり、さだまさしもある程度理解してくれる、というところがいいなと思っていたら、箭内さんが引き受けてくれまして。「100枚に1枚本物で、あとは偽さだまさしのジャケット」という、たわけた企画を出してきてくれてね。その「偽者」を演じてくれたのが高杉真宙くんで、どちらのジャケットがアタリかハズレかでずいぶん話題になりました。

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箭内道彦さん(以下、箭内) 最近もまた「さだまさしガチャ」と名付けられ、バズっていましたね。

さだ 箭内さんが僕のことをすごくよく知ってくれていたことに、僕はとてもびっくりしたんです。それと、誕生日が一緒なんだよね。誕生日どころか干支も、血液型も一緒で、2人とも第一子で長男で。

箭内 そして2人とも午前中生まれなんですよね。さださんは、10時10分、僕は6時10分です。

箭内道彦さん

さだまさしの「檸檬」

さだ 早起きだね(笑)。僕が箭内さんと話していて一番面白かったのは、「夜汽車に飛び乗って」っていう歌詞がときどき出てくるじゃない。それで箭内さんは「夜汽車に飛び乗り」たくて、郡山駅のホーム階段下で「リリリ~」ってベルが鳴るまで待って、ベルが鳴り始めてから駆け出して行って、飛び乗ったっていう話を聞いて「この人は好きだなあ、こういう人がいいなあ」と思いました。

箭内 本当にそういうのが好きなんですよ。18歳で上京したときには、八百屋さんで檸檬を買って聖橋まで行って、快速電車が来たときに、食べかけの檸檬を聖橋から放りましたし。

さだ さだまさしが米津玄師だった時代だねえ(笑)。当時、聖橋の上で雑誌の撮影をしていたら、向こうからおまわりさんが来て「あなた、さだまさしさんですよね。ちょっとこっちいらっしゃい」と手を引っ張って、聖橋の真ん中まで連れていかれたんですよ。「下を見なさい」と言われて川を見たら、檸檬が9個浮かんでいた。

「あんたみたいに影響力のある人はこういう歌をつくらないでくれ。物を川に投げるなんて、けしからん」と怒られてねえ。「申し訳ありませんでした」と平謝りですよ。歌詞は「盗んだ檸檬」なんだけど、「盗んだ」までは知らなかったようで助かりました。