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「僕のお客さまには、とても奥行きがあるんです」

箭内 さださんには不思議な影響力とパワーがありますよね。さださんの曲を仮に全て聞いたことはなくても、さださんのことを知ったつもりになってしまう、“現代の教養”のような方です。

さだ 僕のお客さまには、とても奥行きがあるんです。『秋桜』は聞いたことがあるし、『関白宣言』は、寝るな起きるなって言っている歌ね、という方がたくさんいらっしゃる。その後ろには「アルバムを何枚か聴いた」という人がいて、さらにその後ろには、何度もコンサートに来て、アルバムも深夜のラジオも聞いているという熱心なファンもいらっしゃる。手前の方と奥の方では、さだまさしに対する印象が全く異なるんです。

箭内 僕は奥の方だと自負していますが(笑)、ちなみに、『秋桜』のタイトルは、はじめは『小春日和』だったそうですね。

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さだ そうそう、つまらないタイトルだったんだよ。でもプロデューサーが天才で、「さださん、『秋桜』に『コスモス』とルビがふってありますが、秋桜と書いてコスモスと読むのはすごく新鮮なので、これをタイトルにしていいですか」と聞かれて『秋桜(コスモス)』になったんです。『小春日和』だったら売れてなかったね。

アイデアを形にしていく能力

箭内 僕はずっとさださんのファンですけど、一緒にお仕事をさせていただくようになってからも、さださんへの印象がまったく変わりません。「好き」は一番大きな力ですが、でも、ただ好きなだけでは「100枚に1枚本物のさださんを紛れ込ませる」みたいなアイデアは出てこないとも思っています。そんなクリエイティブの兼ね合いをさださんが一緒に楽しんでくださるところも、たまらなく嬉しいです。

 さださんとご一緒に仕事ができるようになるなんて、中学の頃の自分に教えに行ったら、絶対信じてくれないですから。

 

さだ 僕は、クリエイターとしての箭内さんのエネルギーを高く評価しています。僕にももちろんアイデアはあって転がすことができますが、箭内さんは、ただ転がすのではなく、なぜその方向に転がすのか、どんな人に波及させるのかという戦略があります。それは僕にはない能力で、冷静なクリエイターとしての力はただものじゃない。

 そんないい加減なアイデアだけ持ってる僕と、そのアイデアを形にしていく能力のある箭内さんと一緒だから、いまフジテレビで一緒にやっている『藝大よ、地球を救え。』のような面白いことができるんです。これは僕にとってもすごくありがたいことです。