文春オンライン

「マクロン仏大統領、徴兵復活へ意欲」はミスリードだ

2018/04/03
note

「民事的ボランティア」のニュアンスが強い

「service militaire universel」は直訳すると「普遍的兵役」、つまり「徴兵」という意味になる。「service national」は、仏和辞典で「兵役、徴兵」と訳されており、たしかにフランス革命の頃は「service national」も兵役に就くことを意味したが、今日では「民事的ボランティア」のニュアンスが強い。兵役をさすときには、あえて「service militaire」(兵役)とか「conscription」(徴兵)と言う。なお、さきのマクロン大統領の挨拶の中に「conscription」(徴兵)という言葉が一度だけ出てくるが、あくまでも徴兵のメリットだけを活用するという意味で使われている。 

 先に列挙した日本のマスメディアによる報道のソースは、今年1月19日に軍港ツーロンでマクロン大統領が行った三軍の長への新年の挨拶だったのだが、そこでマクロン大統領は、内容には触れず「service national universel」を設置することへの決意だけを述べた。日本のマスメディアは、言葉のニュアンスの差異にまで注意が向かなかったのだろう。

カリブ海のハリケーン被災地を訪問するマクロン大統領 ©getty

 では、マクロン大統領が語った「service national universel」は具体的にどういった内容を指すのだろうか。

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 現行のservice national(国民役務)法典の第L111-2条によれば、

「service national universel には、調査、防衛と市民意識の日、そして旗のもとへの召喚の義務が含まれる。それには民事役務やその他のボランティアの形態も含まれる」