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多様なフランス国民が「同じ釜の飯を食う」こと=テロ対策に

 また、これはテロ対策の一環でもある。フランス育ちのフランス国民であるテロ事件の犯人たちを追い込んでいった原因は、ほとんどの場合が貧富の差、格差によるものだ。もうずいぶん前から「社会的混合」「連帯」「共和国の価値(自由・平等・博愛・人権尊重)」の推進は急務だとして様々な政策が行われているのだが、功を奏しているとは言えない。マクロン大統領としては、多様なフランス国民が「同じ釜の飯を食う」ことを通じて連帯感を育み、市民的意識を高めることで、過激派の誘惑を断ち切ろうというのである。

 世論からも支持を集めている。2月に発表された世論調査(Huffington Post とCNews、調査はYouGov社)では、3ヶ月〜6ヶ月間実施する「service national」義務創設について回答者の60%が賛成している。ただし、「民事優先」(52%)が過半数で「軍事」(33%)を上回っている(残りは「わからない」)。この傾向は、より詳細な質問項目においてさらに顕著で、「市民意識の育成」(75%)「救急救命処置」(64%)、「共同生活」(62%)が圧倒的な賛成を集め、「武器の操作」(12%)は1割ちょっとに過ぎなかった。

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 フランスで生活している筆者からすると、日本で報じられている「フランス徴兵制復活」と、現地で進んでいるプロジェクトにはこういった隔たりがあるように見える。もっとも、大統領選挙戦中に「兵役」と語っていたのは事実だから、日本のマスメディアによる報道を誤報だとするのは酷だ。ただし、その後によく調べもせず兵力増強やテロ対策要員だとする解説は誤りであり、中東やアフリカへの派兵やスウェーデンの徴兵再開などと結び付けるのはミスリードである。