映画『熱のあとに』(2月2日公開予定)で約5年ぶりの主演を務める橋本愛。俳優として活躍を続ける傍らなぜ雑誌連載などを行ない自分の考え、そして言葉を世に問い続けるのだろうか。(全2回の前編/続きを読む)

©橋本篤/文藝春秋

「自分の人生は言葉によって大きく変わってきました」

――橋本さんは雑誌連載やSNSを通じて、自分の言葉を積極的に発信してきました。その意欲が高まったのは、2016年に雑誌でコラム連載を始めたころですか?

橋本 以前、雑誌で連載を始めたころは、まだ自分の言葉を隠していました。言葉によってイメージを植えつけてしまうと、出演作を純粋に観てもらえなくなる怖さがあって、自分の言葉をそのまま表に出してはいけないと思っていたんです。

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 だからその時期はすごく文章が書きづらくて、必死に隠しながら、それでもにじみ出るものを言葉にしていました。でもその書き方だと、徐々に誤解が広まっていったんですね。まったく逆の意味でとらえられたり、伝えたいことが伝わらなかったり、そういう意味で言ったんじゃないのにということが増えていってしまって。

 あ、これはもうしっかり言葉にしないとダメなんだなって、そのときに思いました。役者として100%純度の高い存在でいることよりも、私自身の思いや考えを伝えることのほうが、もしかしたら大事なのかもなって。それで恐るおそる、自分の言葉を小出しにしていったら、ちゃんと届いていく実感があったんです。それからは少しずつ、思いの丈を吐露していけるようになりました。

©橋本篤/文藝春秋

――言葉にすることは表現行為でもありますが、橋本さんの言葉には自己顕示欲が感じられませんよね。2022年から『週刊文春』に連載している「私の読書日記」を読むと、いつも思います。

橋本 そもそも私は自分の人生が言葉によって大きく変わってきたと思っているんです。映画や音楽、本などの言葉で。だから私が変わったのと同じように、なにかをいい方向に変えられるなら、自分の言葉を使っていきたいなと。

 自分のためには言葉を使いたくないと思います。自分のなにかを解消するために、言葉を使うことはしたくない。誰かのためになった結果、私のためにもなるという循環があるところでないと、言葉を発信したいとは思いません。