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――そういった地図は何年ごとに修正するんですか?

飯塚 当社の地図は、地形図に文字や記号などの情報が大幅に追加されているので経年変化も多くあります。また道路地図は、主要な道路が開通すれば当然、それらを入れなくてはなりません。ですので、だいたい年に一度は更新、修正をする必要があります。

竹内 経年変化が少なければ部分的に修正、そして大きく地形が変わった際などには、その成果が国土地理院から新たに発表された場合に、その基図を取り込み直し、全面修正を行っていきます。

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飯塚 先ほど言われた「4メートル隆起した」というのは暫定的な速報値なんですね。役所としての正式発表ではないと思います。これから改めて測量してその成果が出れば、私たちの都市地図・道路地図のレベルでも、書き換えるところがおそらく出るでしょうね。

竹内 隆起や沈下、崩落、液状化したところがたくさんあるでしょうからね。そして正確な測量が出るまで半年、1年と時間がかかるようでしたら、その間に出版する地図には「ここは通れない」などのコメントを載せることになります。

地面が大きく隆起するなど、地形にも影響があった ©文藝春秋

飯塚 地震などによる地形の変化ということでいえば、阪神淡路大震災のときは、道路が寸断されるなど都市部の被害が甚大でしたから、数カ月の間、その事情を記した「対応版」と表紙に書いた地図を出版しました。東日本大震災のときは、津波の浸水範囲を記した地図を出したりもしています。

――国土地理院の測量成果が出る前であっても、書いておくべきことがあれば柔軟に記していくと。

竹内 そうですね。影響が年単位にわたる場合は、地図に記載して注意を促す必要が出てきますからね。

普段から地図を眺めることが有事の備えになる

――普段から地図に接していることで、有事の際に役立つことがたくさんありますね。

飯塚 そうですね。とりわけ『分県地図』シリーズは、自分の都道府県のものだけでも部屋などに貼り普段から意識していただくだけでも、いざというときの備えになると思います。またお住まいの市町村から配布されている「ハザードマップ」は、最近は良質なものが多いので、入手したら仕舞い込まずに、たまには広げて見ることをおすすめします。

竹内 『分県』シリーズの裏面には、各地の名所や史跡も紹介しています。こういった地図で関心を持ってもらって、現地が元気を取り戻したときには観光に行って、復興を後押ししていただければ嬉しいですね。

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 紙がいいかデジタルがいいかの論は、本稿の趣旨ではないが、やはり「有事の際には紙の地図が役立つ」というのは、今回の話を聞いて改めて思った。「紙の地図を見ながら目的地に行くのは、それなりの慣れが必要ですよ」とは、竹内さんのお言葉。今度、紙の地図を手に、目的地に行く練習をしてみようと思った。

写真=山元茂樹/文藝春秋