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“K-POP成功の法則”を完全にムシ…NewJeansが世界に仕掛けた“戦略”〈現地記者が解説〉「ヴィトン、Apple、コカ・コーラなど大企業と…」

2024/02/21
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どんな世代にもアピールできる魅力

 多くのK-POPの曲は4分程度の長さで、「1節→サビ→2節→サビ→クライマックス」という構成で、起承転結がはっきりしている。だが、 このような公式にとらわれない曲をリリースしているのがNewJeansの特徴だ。

 2~3分程度の比較的短い長さに2000年代に流行したポップスやR&B、ヒップポップなどを基盤とし、無二のグルーヴ感をつくり出す。

 既存のヒット曲でよくみられる、強いサウンド、高音のクライマックス、華麗なラップ……といった計算しつくされたボーカルというよりは、穏やかでトレンディな歌い方を駆使するローテンションな音楽で、聴衆に癒しを与えるような設計である。

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2023年3月、「ソウル・ファッションウィーク」のオープニングショーに登場したNewJeans ©︎AFP=時事通信社

 大衆音楽評論家のファン・ソノプ氏は、「NewJeansの音楽的魅力は、これまでアイドルグループに関心がなかった人々まで引き込んでいる」と評価する。

「アイドルグループの多くは強いインパクトやキャッチーなフレーズを有した、アップテンポな音楽が主流だが、NewJeansはそうではない。自然なサウンドメイキングで高低差を減らしたメロディーと、かすかに吐き出すような歌い方を通じて、どんな世代にもアピールできる音楽をつくり出した。

 さらに、彼らの曲すべてに、10代の頃の感性が色濃く表現されている。これによるノスタルジアは、幅広い世代に響く魅力をつくりだしている。ターゲット層を絞らない、“脱K-POP”といった印象で、彼女たちを特別な存在に位置付けている」

振り付けにも見られる「自由」

 NewJeansのもう一つのキーワードは「自由」だ。それは楽曲スタイルだけでなく、振り付けにも見られる。

 従来のK-POPガールズグループがアピールポイントとしていた、華麗で切れ味あふれる「カル群舞」(※カル=刃物の意。体を曲げる角度、指先の動きまで完璧な刃物のように合わせるダンス)ではなく、ダイナミックだが、柔らかくて自由な雰囲気のパフォーマンスを披露する。

NewJeansの振り付けは他のK-POPグループと比べて「自由な雰囲気」が特徴(NewJeans「ETA」のパフォーマンスビデオ-HYBE LABELSの公式YouTubeチャンネルより)

 また、NewJeansには第4世代アイドルに必須といわれていた独自の「世界観」というものがない。コアなファンだけが理解する難しい世界観よりは、大衆を引き込む物語性を意識したミュージックビデオや音楽で、韓国だけでなく全世界の音楽ファンを魅了しているのだ。