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“K-POP成功の法則”を完全にムシ…NewJeansが世界に仕掛けた“戦略”〈現地記者が解説〉「ヴィトン、Apple、コカ・コーラなど大企業と…」

2024/02/21
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デビュー曲に仕掛けた“戦略”

 たとえば、それまでのアイドルグループは、デビューする数ヵ月前からチーム名やメンバーを一人一人順に公開し、デビューアルバムのコンセプト写真から楽曲リスト、ミュージックビデオ(以下、MV)のティーザー(※予告編のような、断片的な情報をつなぎ合わせた映像のこと)まで、段階的に情報解禁しながら大衆の関心を高める手法を使ってきた。

 しかし、NewJeansは一切の事前情報なしに、デビュー曲「Attention」のMVをいきなり公開するという手法をとった。これに対して、ミン・ヒジン代表は韓国メディアのインタビューで次のように述べている。

「デビューはすでに多くの関心を集めており、ティーザーは必要ないと思った。(グループに対して)好意的であろうとなかろうと、気になって一度はMVを視聴するはずで、その一度の好奇心を引き出すことが、私たちの音楽に触れてもらう機会につなげるための戦略だった」

NewJeansをプロデュースするミン・ヒジン(45)(ミン・ヒジンのインスタグラムより)

「ヒットメーカーであるミン・ヒジンがHYBEと手を組んで、“BTSの妹分”ともいえるガールズグループを新たにデビューさせる」とデビュー前から高い関心を集める中で公開された「Attention」は、期待を裏切らない衝撃を与えた。

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韓国で流行中の「ニュートロ」という感性

 ミン・ヒジンが打ち出した「2000年代のハイティーン」というコンセプトも新鮮なものだった。VHSテープやポラロイド写真のような、ビンテージでノスタルジックな雰囲気のMVや、体にぴったりフィットするセクシーな衣装ではなく、制服やジーンズにクロップド丈のTシャツなど、10代のみずみずしさを象徴するようなファッション。

 さらには、放課後の体育館や学校の運動場、レトロ感あふれるプールなどをミュージックビデオの背景として登場させる舞台装置も、2000年代の懐かしい雰囲気を感じさせた。

NewJeansのデビュー曲「Attention」のミュージックビデオ(HYBE LABELSの公式YouTubeチャンネルより)

 ここ数年、韓国では「ニュートロ」(new+レトロ)という感性が大流行している。NewJeansはこの「ニュートロブーム」に青春を想起させる演出を重ね、10代の若者たちには同年代の仲間のような親近感を感じさせ、上の世代には懐かしさを感じさせることに成功した。

「思い出の中の少女」のイメージを抱かせる

 大衆文化評論家のイ・テジュ氏は、NewJeansのコンセプトを次のように説明する。

「最近ではやや珍しい、10代の思い出を連想させるような清純派のアイドルだ。現在活動中の第3世代~第4世代ガールズグループは、強気な女性像を意識したガールクラッシュ(BLACKPINK、ITZY、aespa、LE SSERAFIM)や、明るく可憐なイメージ(TWICE、Red Velvet、IVE)、独創的でユニークなイメージ(STAYC、NMIXX)などに分かれている。

 NewJeansの場合はこれらと一線を画しており、高校時代のどこかですれ違ったような『思い出の中の少女』のイメージを抱かせ、男女両方のファンを獲得している」

デビュー前に事務所の先輩であるBTSのミュージックビデオに出演していたハニ(中央)とミンジ(右)(BTS「Permission to Dance」のMV-HYBE LABELSの公式YouTubeチャンネルより)

 さらに、NewJeansが全く新しいアーティストのように感じられる最大の理由は「楽曲」にあるといえよう。