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映画『キングダム』シリーズ成功させた脚本家の手腕

 たとえば本作の脚本を担当する黒岩勉は、『ONE PIECE FILM RED』、『キングダム』(佐藤信介・原泰久と共同執筆)、『キングダム2 遥かなる大地へ』『キングダム 運命の炎』(ともに原泰久と共同執筆)といった、マンガ原作の映画化を成功させてきた脚本家である。

 とくに『キングダム』シリーズは、まさに「長編マンガを、数作かけて映画化する」という手法を取っていた。この前例があったからこそ、『ゴールデンカムイ』も「まずは原作マンガの3巻までを描く」という選択を取ることができたのではないだろうか。

山﨑賢人は映画『キングダム』シリーズでも主人公を演じている ©getty

「同じ世界観のなかで何作も生み出す」ことに長けた久保監督

 また監督の久保茂昭は、『HiGH&LOW』シリーズの監督として知られている。「ハイロー」として熱狂的なファンを生んだこの作品の特徴は、「ひとつの世界観で、テレビドラマや映画が何作も続いている」ことにある。

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 これは日本のテレビドラマ業界においては異例のことだ。海外の長編ドラマでは、数シリーズをまたぎ展開する例はしばしばある(たとえば『ゲーム・オブ・スローンズ』はシーズン8まで辿り着いている)。しかし昨今の日本のドラマでは、たとえシリーズをまたいだとしても、続編は1~2作で終わることが多い。

 そんな状況にあって、『HiGH&LOW』シリーズだけが異質なのだ。『HiGH&LOW』シリーズだけで映画を7本も作っている久保は、現在日本でもっとも「同じ世界観のなかで、さまざまな登場人物に焦点を当てながら、何作も映画やドラマを生み出す」手法を操るのに長けた監督なのである。

2019年に公開され、興行収入12.5億円を記録した映画『HiGH&LOW THE WORST』。「ハイロー」シリーズは豪快なアクションシーンも高い評価を集めた

 長編マンガ実写化のノウハウが詰まった脚本と、シリーズものとして構成するノウハウが詰まった映像。その2つが交差したところに、映画『ゴールデンカムイ』は存在する。本作が高い評価を受けているのには、こうした2人のプロフェッショナルが携わっているという背景があるのだろう。

 とはいえ、ノウハウだけではもちろん映画は成功しない。真冬の北海道で撮影されたというスタッフや俳優たちの本作に賭ける熱量が、スクリーン越しに伝わってくる。おそらくこの先、続編も制作され、『ゴールデンカムイ』はマンガの実写映画化の歴史に残る作品になるはずだ。

 このような作品が生まれたという奇跡を、ぜひ映画館で目撃してほしい。