1970年代を代表する歌手、「キャンディーズ」の元メンバー、伊藤蘭(69歳)が46年ぶりとなる「紅白歌合戦」出場を果たしたのは、昨年大晦日のことである。
デビューから50周年となるこの年最後の日、ソロでNHKホールに登場した伊藤蘭。かつての映像をバックに『年下の男の子』『ハートのエースが出てこない』『春一番』をメドレーで熱唱、往時と変わらぬパフォーマンスを披露した。
だがこのとき、ある意味で主役以上に注目を集めた特異な集団があった。150人を超える筋金入りの古参ファンである。
伊藤蘭のイメージカラーである赤のハチマキを巻いた、白髪頭の男性たち。奇妙なまでに統率された掛け声と、目標地点に上から落とす熟練の「テープ投げ」を見た視聴者からは、驚きと称賛の声が上がった。さまざまなメディアがその「反響」を伝えている。
<親衛隊のコールやばい>
<元祖ドルオタの本気をみた>
<普通のおじさんには戻れない>
「紙テープを“伊藤蘭さんご本人に”投げたのは、1978年4月4日、後楽園球場でのファイナルコンサート以来です。まさかまたこんな日が来るとは思っていませんでした」
満足げな表情で“ラン活”を語るのは、2008年に復活した新生「全キャン連」(全国キャンディーズ連盟)と2019年に立ち上げた「全ラン連」(全国伊藤蘭連盟)の代表をつとめる著述家・編集者の石黒謙吾氏(62歳)である。
「あの日集まっていたファンのうち…」
伊藤蘭は2019年、ソロの歌手としてデビューを果たしているが、80年代以降はどんなアーティストに対しても、本人が歌唱しているステージへの「紙テープ投げ」は禁止されていて、伝統芸復活はこれまでなかなか実現しなかったという。
「あの日集まっていたファンのうち、僕のようにキャンディーズの活動中にコンサートを追いかけて回ったようなメンバーは、少数派です。当時はまだ小さかったり、経済的な制約などさまざまな事情でライブに行くことができなかったファンも、40年以上という雌伏の時代を経ていま集まっている。感慨深いですね」