2023年9月1日にデビュー50周年を迎えた伊藤蘭さん。今年12月には、子供時代や、キャンディーズとしてデビューしてから現在に至るまでを振り返った初エッセイ『Over the Moon わたしの人生の小さな物語』(扶桑社)を上梓した。ここでは、同書より一部を抜粋。「キャンディーズ」の誕生秘話を紹介する。(全2回の1回目/2回目に続く)
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キャンディーズ誕生
スクールメイツになって3年ほどたった頃、新しく始まるNHKの音楽番組『歌謡グランドショー』のマスコットガールのオーディションがありました。
そのときに選ばれたのが、同じ年にスクールメイツに入ったスー(田中好子)さん、1年あとに入ったミキ(藤村美樹)さん、そしてわたしの3人でした。ふたりともとても可愛らしくて、最初から目立つ存在でした。
3人で番組に出るにあたって、ユニット名をつけようということになりました。自分たちで考えて候補にあげたのは、ヴァイオレッツとかトリコロールとか……。ただ、ヴァイオレッツはすでに活動しているコーラスグループがいたので断念。なかなか決まらないことに痺れを切らした番組プロデューサーの矢島さんが、「じゃあさ、食べちゃいたいほど可愛いという意味で、キャンディーズにしよう!」とあっさり決めたのです。名前が決まって嬉しいような、それでいてちょっと気恥ずかしさを感じたのをおぼえています。
「いつか自分たちの曲が歌いたい」
わたしたちの役割は、マスコットガール兼、番組のアシスタント。(和田弘と)マヒナスターズさんと「今月の歌」を歌ったり、あるときは3人だけで歌わせてもらったり。沢田研二さんの後ろでダンスを踊ったこともありました。そうなのです。子供の頃に憧れた、沢田研二さんのバックで踊るというチャンスもいただいて、それはそれは緊張しました。
アシスタントとして椅子やマイクを運んだり、音合わせに来られなかった歌手の方々の代わりに歌ったりと、いろいろな経験を積ませてもらう機会もいただきました。
番組のために集められた3人でしたが、次第にグループとしての意識がわたしたちのなかに芽生えていきました。何がなんでもデビューしたい! と願っていた3人ではありませんでしたが、「ラン、スー、ミキ」と呼ばれ、キャンディーズとしての活動や応援してくださる方が増えるにつれ、「いつか自分たちの曲が歌いたいな」「この3人でレコードデビューができたらいいね」と、プロデビューへの希望や期待が膨らんでいったのです。そして、待望のデビュー曲が、1973年9月1日発売の「あなたに夢中」に決まりました。