2023年9月1日にデビュー50周年を迎えた伊藤蘭さん。今年12月には、子供時代や、キャンディーズとしてデビューしてから現在に至るまでを振り返った初エッセイ『Over the Moon わたしの人生の小さな物語』(扶桑社)を上梓した。ここでは、同書より一部を抜粋。人気絶頂期の「キャンディーズ」は、ヘアメイクや衣装にどのようなこだわりを持っていたのだろうか。(全2回の2回目/1回目から続く)

伊藤蘭さん ©撮影/前田晃

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ヘアもメイクも自分たち

 ほかのグループのことはよくわかりませんが、わたしたちの頃は、衣装さんに作ってもらった衣装ケースにその日着る衣装を数点入れ、ケースの下部には靴を収納。片手にメイクボックスを持ち、さらに私物を入れたショルダーバッグを肩からかけて、左右に揺れながら仕事場まで通っていました。

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 ヘアもメイクもプロの方にお世話になることはなく、テレビ出演も雑誌の撮影も、すべて自分たちで行うのが当たり前。髪の毛は、くるくるドライヤーがあったのでそれを駆使してセットし、メイクは見よう見まねで始めて、後年はずいぶんと上手になっていました。着物を着られる演歌の方などは、ヘアメイクさんを連れて作り込むようなセットをしていましたが、わたしたちは最初からナチュラルなスタイルだったので、なんとかなっていたのでしょう。

 わたしは15、16歳の頃から、なりたい髪型をイラストで描き、これもいいな、あれもいいな、と夢を膨らませていました。当時はウルフカットが流行っていたこともあり、「段カットのイメージなのだけど、前髪にはさざ波を入れてほしい。空気がはらんだようなさざ波を」なんて、独特の注文をつけていたのを思い出します。

キャンディーズらしさ

 衣装は、専門に作ってくださる方がいて、歌う曲が決まると「これがいいですね」「ではこんな感じで」などと打ち合わせをしながら自分たちで決めていきます。初めてのアルバムの収録曲に「キャンディーズ」という歌があるのですが、そのなかに「ロマンチストな私ラン!」「ちょっとボーイッシュなミキ!」「ちょっぴりセンチなスー!」と、3人のキャラクターを描写したセリフがあって、そのキャラクターに当てはめて作った衣装もあります。

 ミニスカートが多いように思われますが、「年下の男の子」のときはロングスカートでしたし、歌によってはロマンティックなワンピース、白いドレスなど、意外とバラエティ豊富です。

 曲や衣装のイメージから、メイクの方針を3人で決めることもありました。「今回はパープルのシャドウを入れてみようか」「ちょっと深めのメイクにして、口紅は赤系ね」とか。

 3人のなかでは、「キャンディーズはこうよね?」というイメージが少しずつできあがっていった気がします。ラストコンサートのときも「キャンディーズらしいのはこっちじゃない?」と言いながら衣装を決めました。大胆さもあるけれど、どこか可愛らしいイメージ。わたしたちにとっても、おそらくファンの方たちにとってもそうだったと思います。