「僕はむしろ絶対にイヤでしたよ。やはり、それをご本人たちが望んでいるのか、ということで。ファンからの押し付けは彼女たちを喜ばせることにつながらない。見返りを求めたり、迷惑をかけることはありえませんから。それが全キャン連の考え方です」(石黒氏)
同時代に活躍した山口百恵やピンク・レディーと比べれば、大きなヒット曲も少なかったキャンディーズが、これほどまでに記憶に残る存在になり得た理由はどこにあったのか。
「人気絶頂にある中で引退したことに加え、しっかりとした音楽性を持った歌手、アーティストであったこと。そして3人と、3人を愛して支えたスタッフ全員が、ファンと融合し、客席と一体化するステージに昇華させてくれたこと。そして伊藤蘭さんはいまも日々、進化している。半世紀が経過してもなお、新たなファンが誕生していることがそれを明確に物語っています」(石黒氏)
「この50年が最高の思い出であり、ささやかな誇りでもあります」
2019年5月、伊藤蘭がソロ歌手としてカムバックを果たしたあと、石黒氏は積年の「感謝の思い」を曲にしてサブスクで配信した。『微笑の恩がえし』(石黒謙吾:作詞、スージー鈴木:作曲)を発表し、自ら歌っている。
<遮断器が降りて 電車が きみを闇夜にかき消した>――そんな導入で始まるこの歌に込めた思いを、石黒氏が語る。
「彼女たちが引退した後、時代は流れ、僕らはそれぞれの人生を歩んできました。それでも、キャンディーズと僕たちの5年間があったからこそ、その燃え尽きた思い出と3人への変わらない熱情を胸に、生きてきた。だから彼女たちに感謝しかないんですね。いま思うのは、一切の打算抜きで、何の得にもならないことを、よく50年も続けてやってこれたなあと。それが最高の思い出であり、ささやかな誇りでもあります」
「全ラン連」(全国伊藤蘭連盟)を主宰する石黒氏の人生の目標は、「蘭さんの葬儀を見届けること」だという。
「蘭さんが106歳のとき、僕は100歳。そこまで生きれば大丈夫かな。全キャン連の一会員としての使命をまっとうするため、長生きできるように頑張りますよ(笑)」