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これは野球界だけの問題ではない。日本のスポーツ界が突きつけられた現実だと筆者は感じている。

低酸素トレーニングで大躍進した城西大

青山学院大が2年ぶり7回目の優勝を飾った正月の箱根駅伝だが、大会で過去最高順位(6位)を更新する3位に食い込んだ城西大も大きな注目を浴びた。

城西大は直近10年間で箱根出場は7度にとどまっているが、実は、世界大会に羽ばたいた選手を何人も輩出している。正月の大躍進で、早稲田大時代に箱根駅伝のスター選手だった櫛部静二監督の“指導力”が高く評価されている。

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なかでも特徴的なのが、櫛部監督が現役時代にはほとんど経験しなかった「低酸素トレーニング」を本格的に導入していることだ。ただ闇雲に走ってトレーニングするのではなく、効果が科学的に実証されているこうしたマシンを使っている。

近年はボックス型の「低酸素ルーム」を寮内に設置しているチームが増えており、低酸素トレーニングは珍しいものではない。ルーム内にトレッドミルやバイクが置いてあり、故障中でも心肺の負荷を落とすことなくトレーニングできるのだ。しかし、たいていの場合は1~2人しか入ることができない。

一方、城西大はトレッドミルを10台設置している「低酸素室」を大学内に完備。夏の暑い時期にも快適な空間で、高強度のトレーニングができるという。実業団時代に母校で低酸素トレーニングを積んだ山口浩勢(現・加藤学園高陸上部副顧問)が3000m障害で東京五輪とブダペスト世界選手権に出場したこともあり、徐々に低酸素室を使用する選手たちが増加。今年の箱根駅伝5区で区間新記録を打ち立ててMVPに輝いた山本唯翔(4年)は多いときで週3回も利用していたという。

大人気の箱根駅伝は競争が過酷になっており、予選会を通過するのは簡単ではない。本格強化している大学でさえも半数近くは出場できない状況なのだ。結果を残せないと、監督は“新たな職場”を探すケースが出てくる。そのため指揮官たちは死に物狂いで指導に当たっている。