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では、実業団はどうか。世界大会に複数回出場しているある現役ランナーがこんなことを話してくれた。

「実業団の監督・コーチは指導力がないというか、怠慢だと感じますね。大学は4年間で選手が卒業するので、指導者はいろんなことをアップデートしていかないと、チームを強化できません。一方、実業団は強い選手を獲得すれば、強いチームができあがる。指導者がスキルアップしなくても成り立つんです。しかも、ニューイヤー駅伝である程度の結果を残せば、指導者として生き残ることができる。世界のトップに置いていかれるのは当たり前なのかなと思います」

ニューイヤー駅伝で優勝経験のあるチームで主力だった元選手も「チームが優勝できたのは、コーチングが素晴らしいというより、強い選手が多く入るようになったからだと思いますよ」と本音を漏らしていた。つまり、最先端のトレーニング理論を駆使して、といった工夫はほとんどされていない。選手が大学までに培ったスキルとポテンシャルを実業団でただ浪費しているようなものというのは言い過ぎだろうか。

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実業団で本格強化しているチームの8~9割はニューイヤー駅伝(全日本実業団駅伝)に出場できるが、マラソンでは男子の場合、世界記録と日本記録で4分以上の開きがある。世界を本気で目指しているチームはさほど多くない印象だ。大迫傑(東京五輪男子マラソン6位入賞)のように「世界と戦うんだ」という明確なモチベーションを持ち、内外の優れたコーチに積極的に耳を傾ける選手でないと、本当の意味で世界と戦えないだろう。

最先端の知識をどう生かすのか

駅伝界と対照的なのが、日本のラグビー界だ。

20年以上、各世代のラグビーチームに携わっているトレーナーはこう話す。

「社会人はトップリーグが始まり(2003~04年シーズンから)、大きく変わりました。外国人のストレングスコーチが当たり前になっています。練習だけでなく、戦術面もグローバルスタンダードだと思いますね。一方で大学はさほど変わってないイメージです」