ただ、幼馴染だった2代目は店がなくなってもまた作れるようにと、デミグラスソースだけは毎日作りつづけていたんです。その話を聞いて、この店を記録に残しておきたいと思い、『IMPERIAL大阪堂島出入橋』という短編映画(2022/『MIRRORLIAR FILMS Season2』の1編)を作りました。ちなみに母にハンバーグを作ってもらうこともできました。
きっかけはその作品のロケハンを堂島でしていたときのことです。6歳のときの犯行現場が近いことは、もちろんわかっていました。でも建物があるから、隠れて見えないだろうと思っていたんですね。
喫茶店に入ると、その建物が取り壊されていたことに気づきました。それで絶句してしまって。「どうしたんですか?」とプロデューサーの山嵜(晋平)さんに聞かれたので、実はあの場所は……と話しました。
でも驚いたことに、普通の思い出話をするみたいに淡々と話せたんです。むしろ普通に話せることに笑えてきて、だとしたらそろそろこのテーマを見つめられるのかもなと。それでいろいろな人たちと話をしながら、作ることを決めました。
「47年経ってやっと対峙することができた」
――作るにあたっては、やはり覚悟が必要でしたか?
三島 ええ、47年たってやっと対峙することができたと思います。自分自身を客観的に見て、ああいう経験をした取材対象のひとつとしてとらえていました。
これまでの商業映画では、逆の考え方をしていたんです。いまはどういう時代で、そこでどんな事件が起きて、どういった人物を描くのかって。そういう順番だったんですね。ところがまず、自分自身がいまなにを感じているか、どういうできごとを経て生きてきたのかを見つめ直すしかなかった。それは以前とまったく逆のアプローチでした。
――2017年からの#MeeToo運動や、近年相次ぐ性被害の訴えは、制作する際に背中を押してくれましたか?
三島 いや、背中を押されたというのはないですね。本当に個人的な、47年を経て自分が普通に話せるようになったということがいちばんのきっかけです。
――今回の作品が焦点を当てるのは「罪の意識」ですが、それはどういった理由からですか?
三島 47年前の事件を掘り下げていくときに自分の中で大きかったのは、今回の台詞にも書いたんですが、「なんで罪の意識を感じなきゃいけないんだよ。やられたの、私じゃん」という部分です。