1970年代末、ソ連占領下のエストニアを舞台に、若き二等兵とエリート将校の禁断の愛を描いた映画『Firebirdファイアバード』が、現在公開中だ。
同性愛は重罪。そんな抑圧された時代を生きた元兵士本人の回想録を映画化した本作は、エストニアで大ヒット、法改正に大きな影響を与えたことでも広く話題になっている。
このたび日本公開に合わせて来日したペーテル・レバネ監督、メインキャストであるトム・プライヤー、オレグ・ザゴロドニーにインタビューを行った。
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原作者の明るさやユーモアをセルゲイ役に取り込んで
あるひとりの俳優セルゲイ・フェティソフが、レバネ監督に、自身の回想録を託したことからこの映画作りは始まった。回想録に感銘を受けた監督はすぐに映画化を決意。その後、脚本家でもある俳優トム・プライヤーに出会うと意気投合、2人で時間をかけてセルゲイ・フェティソフにインタビューを重ね、脚本の準備を進めた。そして脚本がようやく完成した2017年のタイミングで、セルゲイ・フェティソフは65歳の若さで急逝し、本作の完成を観る事は叶わなかった。
――主人公でもある原作者セルゲイ・フェティソフさんへのインタビューは、作品にどのような影響を与えたのでしょうか?
トム・プライヤー(以下「プライヤー」) 彼にインタビューすることで、僕自身がセルゲイ役をどう演じるかということに大きな影響がありました。もともと「同性愛はタブー」という厳しい状況下だから、セルゲイ役ももっと鬱々としたキャラクターにしていたんです。でも彼本人に会ってみたらものすごくポジティブで、明るい人でした。
そこでまず脚本上でセルゲイ役の性格を変えていきました。彼はとにかく生き生きとした存在で…だから、そういうキャラクターで演じることに方向転換したんです。抑圧された時代の悲恋のストーリーなので、全体的には抑え気味にしたけれど「彼の快活さ、面白みのある人柄を、ところどころに散りばめていこう」と決めて、彼の軽やかさを反映するように演じました。
――確かに映画で悲惨な状況に陥っている場面を観ていても、彼自身の明るさに救われる思いがしました。
プライヤー そう感じてもらえたらうれしいです。彼は何でも「いいところだけを見よう」と心がけて信条とし、常に徹底する。そんな人だったんです。