「愛はどんな形であっても歴然とした愛」
――最後に、監督から日本のみなさんに、この作品の魅力について、改めて紹介いただけますか?
レバネ監督 これは美しい禁断の愛を描いた映画です。たくさんの情熱と愛情をかけて作りました。召集兵と、戦闘機のパイロットである将校の間に生まれた愛であり、かつ冷戦下の空軍というちょっとユニークな設定で、何より歴史的な背景に関しては、正確に描くようこだわりました。1970年代のソ連の雰囲気が、本作を見ればよくわかる。実際に舞台となるエストニア、そしてモスクワも現地で撮影しました。それだけに当時の空気感が伝わってくると思います。
普遍的な話ですから、公開している国ではLGBTQのコミュニティのみならず、より広い観客から反響を得ています。特に女性から多くの好意的なコメントが寄せられていて「自分も同じような経験をした」という共感の声も上がっています。
何より訴えたいテーマは「愛はどんな形であっても歴然とした愛だ」ということ。「ラブ・イズ・ラブ」それを提唱したいんです。幸福な社会を作るためには「自由に誰を愛してもいい」ということなくしては成り立たない。そのことを伝えられれば嬉しいです。日本でもできるだけ多くの方に観にきていただきたいと思います。
ペーテル・レバネ
エストニア生まれ。オックスフォード大学、ハーバード大学で学んだ後、プロデューサーとしてキャリアを積む。エルトン・ジョン、ボブ・ディラン、マドンナ、スティング、レディー・ガガら国際的なアーティストのイベントプロデュースも行う。さまざまな映画祭で審査員に任命され、冒険家としての顔も持つ。
トム・プライヤー
俳優・脚本家・プロデューサー。王立演劇学校(RADA)で学び、卒業後脚本の執筆活動を開始。主な出演作は、エディ・レッドメイン演じるスティーヴン・ホーキング博士の息子役で『博士と彼女のセオリー』(2014)など。
オレグ・ザゴロドニー
ウクライナの映画・演劇・テレビ俳優。キーウ生まれ。2010年よりレシャ・ウクライナ国立アカデミック劇場に所属。2015年にモスクワ劇場ゴーゴル・センターの劇団に招かれる。最新作は『Hold Me』(2020)、ウクライナのTVシリーズ『Pregnancy Test』(2022)など。
『Firebirdファイアバード』
STORY
1970年代後期、ソ連占領下のエストニア。モスクワで役者になることを夢見る若き二等兵セルゲイ(トム・プライヤー)は、間もなく兵役を終えようとしていた。そんなある日、パイロット将校のロマン(オレグ・ザゴロドニー)が同じ基地に配属されてくる。セルゲイはロマンの毅然として謎めいた雰囲気に心奪われる。写真が共通の趣味である2人は友情を交わし、それはやがて愛へと変わる。しかし、当時ソ連では同性愛はタブーであり、発覚すれば厳罰に処されてしまう。一方、同僚の女性将校ルイーザ(ダイアナ・ポザルスカヤ)も、ロマンに思いを寄せていた。そんな折、セルゲイとロマンの関係を怪しむ上官は、2人の身辺調査を始める。
STAFF&CAST
監督・脚色:ペーテル・レバネ/共同脚色:トム・プライヤー、セルゲイ・フェティソフ/原作:セルゲイ・フェティソフ/出演:トム・プライヤー、オレグ・ザゴロドニー、ダイアナ・ポザルスカヤ/ 2021年/ エストニア・イギリス/配給:リアリーライクフィルムズ/新宿ピカデリー、横浜シネマ・ジャック& ベティにて上映中