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 庶務課長の梶山氏は、そんな私の気持ちを読んでか、次のように言った。

「篤弘にしても、一郎にしても、決して極悪人ではないんです。でも、女性やギャンブルを前にすると、自分の力では犯罪への衝動が止められなくなってしまう。欲望を制御できないのです。そして彼らには、それを止めてくれるような環境や支援者がいなかった。それでずっと犯罪をくり返し、高齢者と呼ばれる年齢に差し掛かってしまっているんです」

知的障害、精神疾患でもない

 2人が自分を律する気持ちを持っていないのは明らかだ。実を言えば、インタビューの最中、彼らは知的障害や精神疾患があるのではないかと思った。だが、裁判や刑務所で調べた限り、そうした事実はなかったという。

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 梶山氏は言う。

「彼らは若い時は、もう少しうまく逃げ回っていたと思います。けど、年を取ると、逮捕されることも増え、だんだんと刑務所が居場所になってしまう。そして認知症になったり、車椅子生活になったりする。累犯者の高齢化問題は非常に深刻です。鳥取刑務所では介護福祉士が1名いますが、他の刑務所では募集をかけても集まらないと聞いています。介護福祉士は売り手市場なので、なかなか刑務所に来たがらないのが現状なのです」

 梶山氏はそう言って、鳥取刑務所に勤める介護福祉士の佐藤絵理沙氏(仮名、26歳)を紹介してくれた。