人は誰でも、心の中で、必ず「何を、より大事に思うか」「何を、より優先させるか」といった順位づけをしています。
たとえば、仕事とプライベート、どちらを大事にするか。
お金とやりがい、どちらを大事にするか。
AさんとBさん、どちらとの約束を優先させるか。
ふだんは複数のことを同じように大事にしていても、人生において必ず、いずれかを選択しなければならない局面がやってきます。
そのとき、人は誰でも、迷った末に優先順位を決めるはずです。
優先順位を尊重することは、その人を肯定すること
老いや病気により体が弱くなったり、この世を去るときが近づいてきたりすると、一人でできることも残された人生の時間も限られてくるため、優先順位をつけることを、ますますシビアに求められるようになります。
たとえば、体を動かすのがしんどくなったとき、それでもトイレに行って自力で用を足すことを優先するか、部屋にポータブルトイレを置く、おしめをつけるなど、人に頼ることを選ぶか。
人生最後のときを、病院や施設で迎えたいか、自分の家で迎えたいか。私はホスピス医として、患者さんの優先順位を尊重することを、非常に大事に思っています。
なぜなら、心身が弱っている人、苦しみを抱えている人の優先順位を尊重することは、その人の尊厳を守ること、その人を肯定することでもあるからです。
誰かの尊厳を守る、誰かを肯定するというのは、ただ権利や気持ちを尊重し、認めることではありません。
その人の、どうしても譲れない優先順位を守ること、どうすればその人が穏やかになれるかを考えることだと、私は思います。
そして人は、自分が苦しいとき、自分を否定する気持ちが強いときに、自分の優先順位を尊重してくれる相手を「誠実な人」「信頼できる人」「自分の気持ちをわかってくれている人」と感じるのです。
自分の優先順位を理解してくれる人を大切にしてほしい
苦しいとき、切羽詰まっているとき、自分を肯定できずにいるとき、自分の優先順位を尊重してくれる人、自分の生き方を応援してくれる人がいるなら、その人は幸せです。