2024年1月1日に起きた能登半島地震で、2011年に東日本大震災で被災した福島県から医療支援に参加した人たちがいる。
福島県は1月7日から、災害派遣精神医療チーム、通称DPAT(Disaster Psychiatric Assistance Team)を派遣している。その先遣隊となったのが、県立ふくしま医療センター「こころの杜」のスタッフたちだった。その中に、昨年10月に研修を終えたばかりの精神科医、井上祐紀医師(51)がいた。被災地に派遣されるのはもちろん今回が初めてだ。
「訓練を受けたのが去年10月で、今回が初めての出動でした」
「震災で精神科医?」と疑問に思われた方もいるだろうか。しかし集団災害の後は、普段とは全く異なるストレスに襲われる人が多いうえに、被災地域の精神保健医療機関の機能も低下する。そこで精神科医が現地に入り、速やかに対応するのだ。
中でも井上医師が所属するDPATは、災害後の医療専門のチームで、都道府県や政令指定都市で組織されている。被災県である福島県のDPAT先遣隊は、能登半島地震の当日には早くも動き出している。
「私が先遣隊の訓練を初めて受けたのは去年の10月で、今回が初めての出動でした。大きな地震があると、まず出動できる待機態勢を整える指示がDPAT事務局から入ります。私を含めたメンバーは県立ふくしま医療センターにいったん参集し、現地へ向かう準備を始めました。必要な物品は何か、どういうメンバーで行くかということを協議していました。その状態で、事務局からの派遣依頼を待っていました」(井上医師)
その後実際に福島県から派遣依頼があり、精神科医は井上医師1人、それに看護師2人、心理判定員1人というメンバーが決まった。そして1月7日、いよいよ七尾市にある能登総合病院へ向かうことになった。
「能登総合病院に医療チームの指揮所が設置されていて、そこで各チームがどこへ行けばいいかというオーダーを受けます。私たちは、珠洲市の健康増進センターへ行くことになりました。センターには緊急医療チーム、日赤のチーム、私たち、そして陸上自衛隊が集まり、支援状況を確認しました」(井上医師)