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地震直後に能登入りした精神科医は何をしていた? 特殊チーム「DPAT」の実力と極限状態の実態「もう死んでやる!」

地震直後に能登入りした精神科医は何をしていた? 特殊チーム「DPAT」の実力と極限状態の実態「もう死んでやる!」

2024/02/17
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 井上さんの専門は、児童や思春期の精神医療である。しかし珠洲市は石川県内でも最も高齢化が進行した地域であり、2020年時点で人口の51.7%が65歳以上の地域だ。

 2007年の能登半島地震をきっかけに生まれた、高齢者などの要援助者を収容する「福祉避難所」は今回も設置された。また、健康面で通常の避難所やホテルなどでの生活に不安がある人を対象に「1.5次避難所」も活用された。

1.5次避難所のキッズスペース

「福祉避難所には、認知症の度合いが重い高齢者や濃厚なケアが必要な人たちが集められていました。また『1.5次避難所』に指定されたいしかわ総合スポーツセンターなどでは、特に施設の利用者さんや入所者さんらを中心に移っていたようです。ただ場所にも限りがあるので持っていける荷物に制限があり、付き添いも1人だけ。環境が変わることによって激しい興奮状態になったり希死念慮を呈したり、パニック状態になる人もいました。緊急事態では、孤立している人ほどシビアな影響を受けやすいんだなと改めて感じました」(避難所の運営スタッフ)

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「避難生活ではストレスを抱える人が多い」

「いしかわ総合スポーツセンター」には最大で250人ほどの避難者がいたという。筆者が訪れた1月31日時点でも、189人の避難者が生活していた。新たにセンターに避難をしてくる人がいる一方で、親族の家などに移っていく人もいるのだ。

「避難所は県の職員が運営していて、20人ほどが駐在しています。ほかには、各自治体のDPATチームや、DMAT(災害派遣医療チーム)やDRAT(災害派遣リハビリテーション支援チーム)、JRAT(日本災害リハビリテーション支援協会)など多くの人の力を借りています。それでも避難生活ではストレスを抱える人も多い。この施設はシャワーはありますが湯船がないんです。それで巡回バスを出して温泉に入浴に行くことができるようにしていました。また高齢の方には、1日2回リハビリの時間を作っていました」(同前)

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