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患者が「退院したくない」と話すワケ

――最初は早く外に出たいと思っていたミモリが、だんだんと精神科病棟を「安心できる居場所」として大事に思い始めるのが印象的でした。実際、入院している人たちにとって、精神科病棟はそういう場所になることが多いのでしょうか。

もつお 私が入院していた時、退院間近の患者さんたちが「退院したくない」「退院するのが不安だ」と話しているのを実際に聞きました。

 私自身は「早く退院したい!」「ここから出たい!」という思いが強かったので、その時はとても驚いたのですが、いざ自分の退院が近づいてくると急に不安が襲ってきました。

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 心の病気は退院してからも症状と付き合っていく人が多いと思います。退院してから元の日常にちゃんと戻っていくことができるのか、症状はこのまま良くなっていくのか、という不安もあって、今いる病棟を居心地良く感じる人が少なくないのかなと思います。

精神科病棟で過ごした日常

――入院していた当時、もつおさんが精神科病棟のシステムや待遇に対して「いいと思ったこと」と「改善してほしいと思ったこと」をそれぞれ教えてください。

もつお いいと思ったのは、ラジオ体操です。たぶん、精神科病棟以外の入院だとラジオ体操ってしないですよね。

朝はラジオ体操に参加できる 本編より

 私の入院した病棟では、1日2回、朝食前と昼食前にラジオ体操がありました。

 入院してすぐは「ラジオ体操なんて絶対やりたくない! 恥ずかしいし!」って思っていました。でもいざやってみるとすごく楽しくて、ハマっちゃいました。基本的に病棟から出られない生活だったので、身体を動かせてリフレッシュになったし、気持ちの切り替えもできたので良かったです。

 改善してほしいと思ったことは、患者さん同士のトラブルかなと思います。看護師さんたちが気をつけて見てくださってはいるのですが、別の患者さんに嫌な言葉をかけられて落ち込んでいる方がいたり、そういった話を聞いたことがありました。なかなか難しいとは思うけど、何か改善策があればいいなと思います。

――作品には患者さんたちだけではなく、病棟で働くスタッフも多く登場します。患者同士の関係は安心できる居場所、仲間として描かれていると感じたのですが、スタッフは患者にとってどんな存在なのでしょうか。

本編より

もつお 私が入院していた病棟は、自分の母よりも歳上の女性の看護師さんが多かったこともあって、厳しくするところは厳しく、でもいつも気にかけてくれる、私にとっては安心できるお母さんのような存在でした。