高校2年の春、摂食障害で体調を崩した加藤ミモリは、精神科病棟へ入院する。私物は没収され、家族とも会えない空間で出会った入居患者との生活とは——。
『精神科病棟の青春』(KADOKAWA)は、作者・もつおさんの経験をモデルに描いた「セミフィクション」コミックである。外部と遮断された精神科病棟で、自由にベッドから降りることすら禁じられたミモリが、そこで生活する人々との交流を通じて、変化していく姿を描く。
作品にはどんな実体験が反映されているのか。もつおさんに話を伺った。(全3回の1回目/続きを読む)
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入院当時の自分に近いキャラクターに
――高校生のときに精神科病棟に入院した経緯について教えてください。
もつお 私は高校1年生で摂食障害と強迫性障害を発症しました。発症から半年ほど心療内科に通院していましたが、体重の減少の勢いが早かったので、心療内科の先生に入院治療を勧められました。
つい半年前は普通に学校に通っていて、元気だったのに、どうしていま私はこの場所にいるんだろう? と、入院当初は絶望感でいっぱいでした。
――今回の作品で、主人公ミモリを摂食障害にしたのはなぜでしょうか。描くにあたって意識したこと、気をつけたことなどはありますか。
もつお 今回の作品はフィクションですが、自分が入院当時、病棟での生活のなかで感じたことや関わった方たちとのエピソードを描いていこうと考えていたので、主人公は自分に近いキャラクターにしたくて摂食障害という設定にしました。
過去に出版したコミックエッセイでは、自分を主人公として描いてきましたが、病気の発症から回復までの流れを描いた作品だったのもあって、あまり細かい心情までは描ききれなかった気がしていました。『精神科病棟の青春』の主人公・ミモリには、当時の自分の感情や行動をよりリアルに、丁寧に反映させて描こうと意識しました。