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病気がきっかけで「家族と気まずく」なった

――ミモリの父は病気や病棟に対して抵抗感を抱いていて、厳しい言葉をかけてくるシーンなどもありました。実際、もつおさんご自身や周囲の体験に照らして、そういう親は多いのでしょうか。

もつお ミモリの父親のように、私の家族も残念ながら理解があるほうではなかったと思います。私自身がそうだったように、「今まで元気だったのにどうして!?」と、現実に頭が追いつかなかったのかなと、いまなら家族の気持ちがわかります。

ミモリ自身もなかなか入院を受け入れられなかった 本編より

 当時、同じ病棟に摂食障害で入院されている方と喋っていた時に、お互いの家族の話になったことがありました。私が「病気がきっかけで、少し家族と気まずいんだ」と話すと、「ああ、まだその段階なんだね」と言われたことが印象的に残っています。

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 その方も、ご家族の病気への理解に苦しんだ経験があっての言葉だったようです。「自分だけじゃないんだ」と少しホッとした気持ちと、同時に両親に心配をかけていることへの罪悪感もありました。

――親に限らず、偏見を持っている人は残念ながら世の中に少なからず存在していると思います。そういう人たちに対して思うことはありますか。何を伝えたいですか。

もつお 心の病気、精神科病棟、などと聞くと、世間一般的には「怖い」「つらそう……」というイメージの方が多いと思います。私自身も入院するまではそういうイメージを持っていました。

 実際にきっと様々な問題があって、そうしたことをニュースで目にする機会もあるので、そうしたイメージも現実の一部ではあるのだと思います。

 そんななかで、「そんなことはないと世間に伝えたい!」というほど大きなものではないんですけど、ただ「そんな怖い場所ばかり、つらいことばかりでもないよ」ということを、作品を通して少しでも伝えられたらいいなと思っています。

「タカダさん」のモデルになった人

――作中で、主人公のミモリは精神科病棟で暮らすさまざまな人に出会います。作者のもつおさんにとって、特に思い入れのあるキャラクターは誰ですか?

もつお 特に思い入れがある登場人物は、主人公のミモリと同室の「タカダさん」です。

 彼女は、私が入院していた時に同室だった方をモデルにさせていただきました。私と同じ年のお子さんがいる方で、私のことをよく気にかけてくれました。

最初は目も合わせてくれなかったタカダさんだが… 本編より

 はじめは目を合わせてもくれなかったんだけど、少しずつコミュニケーションを取るようになって、私が退院する日には私の姿が見えなくなるまで見送ってくれたことがずっと記憶に残っています。