――「年下の男の子」がヒットしたときは、うれしかったですか。
伊藤 ついに、という感じはしたのかな?(笑)。歌で頑張ると決めた以上、ヒットするのはうれしかったです。それまで頑張ってこれたのは、やっぱり3人だったからだと思います。お互いに支え合いながら、何事も笑って励まし合えたので、これがひとりだと大変だったなと思いますね。
「今日は、どんな仕事してきたの?」蘭さんの自宅にファンが集結
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人気が出たキャンディーズを支えたのは、ファンだった。のちに解散宣言をしたときも、全キャン連(全国キャンディーズ連盟)とファンクラブ友の会がキャンディーズを後方支援していくのだが、キャンディーズとファンとの距離感は今の時代では考えられないほど近いものだった。
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――当時、蘭さんの自宅には、多くのファンが来ていたそうですね。
伊藤 ファンのみなさんは、『全員集合』に出ている時から、キャンディーズをすごく身近に感じてくださっていたのか、自宅の前に集まって来ていました。私の部屋は道路に面したところだったんですけど、朝、起きるともうみなさんがいる気配がするんです(笑)。
支度して出ていくと「おはよう」から始まって、私が仕事から帰ってくると「今日は、どんな仕事してきたの?」「こんな仕事が楽しかった」「このあいだの、あの番組は良かったね」「ほんと、ありがとう。おやすみ」みたいな会話をして家に入る感じでした。それが習慣になっていましたね。このあいだミキ(藤村美樹)さんに会った時、昔ってそうだったよねって言ったら、わたしはそういうのなかったなぁって(苦笑)。
――今の時代じゃ考えられないですけど、家族は心配しなかったですか。
伊藤 うちの母もファンの方とささやかな交流があったようです。わきまえている方々も多く、普通に話をしたり、犬と一緒に写真を撮ったり。何回も来ているうちに、顔見知りになった方もいて、なんか遠い親戚みたいな感じになっていました。昭和ならではですね。
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人気歌手でありながら“隣のお姉さん”的対応がファンを魅了し、その後も出待ちをするファンは増え続けた。自宅前に人があふれ、警官が出動することもあったが、ファンは自重して自宅近くに隠れて待機。帰宅後に挨拶して解散するという流れができた。今の時代ならSNS上で騒がれ、現場は大混乱という可能性が高いが、当時はまだ牧歌的な時代だった。
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