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未解決事件を追う

長女(25)が4歳下の弟を刺殺、バラバラ遺体を冷凍庫に…きょうだいが生まれ育った“複雑な家庭環境”――平成事件史

長女(25)が4歳下の弟を刺殺、バラバラ遺体を冷凍庫に…きょうだいが生まれ育った“複雑な家庭環境”――平成事件史

酒々井遺体切断事件

2024/03/01

genre : ニュース, 社会

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「ふと見ると、種がついたままの野菜を使った何かのおかずが入っていた。『なにそれ』と聞くほど変わったおかずでした。他の時にもたまにお弁当を見ると、いつも、私の母なら作らない、見たこともないものが入っていて、麻里さんは恥ずかしそうに食べていました」

父親が他界、姉は大学中退し…

 一方の父親は病気になるまでも、母親によれば「あまり話をせず、育児に全く無関心で、子供の名前を呼ばない、抱かない、話をしない。自分の部屋にこもっていた。運動会にもついてこないし、連れて行っても端っこに立っているだけ」だったという。4人のきょうだいたちは、そんな両親に育てられた。

 特に翔さんに対しての母親の虐待は眼に余るものがあったようだ。長女の麻里が大学生になった時に両親が離婚し、のちに父親が死んだ。経済力のない父親の代わりに、麻里は大学を辞め、仕事についた。未成年で学生だった翔さんや妹たちにスマホや服などを買い与えていたという。

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 麻里の精神鑑定を担当した鑑定人は、彼女を「機能不全家族で育ったサバイバー」だと語っていたが、それは被害者である翔さんも同じだった。

 一軒家に残されたサバイバーのきょうだいに何があったのか。麻里は被告人質問で詳しく尋ねられても「あっ、はっきりとは覚えてないです」「はっきり覚えてないです、すみません」など、とにかく“覚えていない”を連発したが、きょうだいと親しかった関係者たちはさまざまなことを記憶していた。

険悪になったきっかけ

 かつては仲が良かったというが、事件前は険悪な状態にあったと、ふたりに近い関係者たちは口を揃える。その理由のひとつは“お互いの生活態度”だった。まず麻里は勤務先の同僚に自宅前まで送ってもらった日、こんなことを話していたことがあるという。

「弟が突然猫を拾って、飼い始めた。部屋に閉じ込めて世話をしない。しっかり世話しなさいって注意したところなんだ」

 麻里と同じ勤務先だった、彼女の元交際相手も法廷で「だんだん仲が悪くなっていった。『自分のものを勝手に使う』と言っていた。暖房器具とかを勝手に使われると……。翔くんが部屋でゲームをしていることがあり『うるさい』とか『近所迷惑にならないか』とか心配していた。最後に会った日は『弟が妹の部屋を勝手に使う』とため息をついていた」と明かした。

 険悪なふたりは生活スペースも別にしており、翔さんは2階の自室、麻里は1階にいることが多かったという。翔さんに来客があったときも、1階のキッチンで調理したものを2階に持って行き、友人をもてなしていた。