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「このあいだ、10代の女の子たちを相手に講義をする機会があって、いつものように日本女性を取り巻くデータを淡々と見せて話したら、そのうちの1人から『上野さんの講義を聞いて、私たちが出ていく世の中が、まっくらなんだってよくわかりました』と言われて。言葉を失いました」

上野千鶴子さん 撮影/後藤さくら

 苛立ちや怒りも隠さない。

「当然、書名そのままの言葉で詰め寄りたい気持ちはありますよ。社会や会社の上のほうにいる、既得権益にまみれたおじさんたちに」

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 ただ、もはや彼らにばかり問題を押し付ければ済む段階ではないともいう。

「今の社会をつくってきた大人の“あなた”の責任を果たしてください、と言いたいんです。傍観してきたあなたにも責任があります。だって、10代の女子に、自分が出ていく社会はまっくらだ、なんて言わせていいと思いますか? 彼らの未来が明るくなるように、あなたが果たすべき責任は何か。考えて行動してほしいですね」

 ところで本書には、多くの近刊から注目すべき研究成果が引かれているほか、終章「これからのフェミニズム」では、未来への希望として、上野さんが注目する次世代のフェミニストの名前が複数、挙げられている。その名伯楽ぶりを指摘すると上野さんは、「そう言われるのはうれしい」と微笑んだあと、こう続けた。

「これまでも多くの研究者や活動家を世に出してきたつもりですが、まだまだ人材が足りないと痛感しているんです。最近では、外国でのフェミニズム運動は知っていても、日本でのそれは全く知らないという世代も出てきた。だから、世代をつなぐことも私の大事な役割だと思っています」

 叱責と謝罪、エールと決意が込められた本書。まさに、今、読むべき一冊に違いない。

うえのちづこ/1948年生まれ。社会学者、東京大学名誉教授、認定NPO法人ウィメンズアクションネットワーク理事長。女性学、ジェンダー研究のパイオニアとして教育と研究に従事。高齢者の介護とケアも研究テーマ。著書多数。