人の下で働くのは嫌なのに、生活保護のお世話になるのはいいんだ、と呆れてなにも言えなかった。そして、父の守りたいものって虚しいものばかりだと思った。
父との決別
ヤクザとの攻防の件で、しばらく父と連絡を取るのを控えていたのだけれど、母の葬儀をきっかけに、また連絡を取り合うようになった。
キングオブクズの父であるものの、関係を修復したいと思った。一緒に住むのは絶対に嫌だけど、遠くからでもお互いの幸せを思える関係でありたいと思ったからだ。
母が亡くなった翌年、今度は祖父が亡くなり、葬儀には父にも参加してもらった。
でも、このときをきっかけに、私は父に対して完全に心を閉ざすことになる。
葬儀のあとの親族だけの食事の場で、父はかつて、自分が賭け麻雀で2000万円も借金を作ったという話を、まるで武勇伝かのように語って聞かせた。
目の前の席で話を聞かされていたのはひろゆき君だった。彼は、ただただ苦笑いをしていた。あのひろゆきですら、コメントに困る父なのである。
私の幸せを願ってくれる親はもういない
食事が終わると、私は父に背を向け、ひと言も口を利かないで帰った。そして、家に戻ってから父にこうメールを送った。
「あなたがおじいちゃんの葬儀で笑いながらしゃべっていた借金のおかげで、あなたとお母さんは離婚しました。その後、私がどれだけ苦労したかわかりますか。どれだけお金のトラブルに巻き込まれて嫌な思いをしてきたかわかりますか」
父は「そんなつもりじゃなかった、ごめん」と返事をしてきたけれど、私の気持ちはもう元には戻らなかった。父との関係を修復できたらなんて殊勝なことを考えていた自分を、ほんとうに哀れに思った。
母も亡くなり、私の幸せを願ってくれる親はやっぱりもういないんだと思い知った。
その後、しばらくして、私とひろゆき君はフランスに移住した。
移住先が決まったときも、父には住所を伝えなかった。「携帯電話を解約するので、なにか用があればメールをしてください」とだけ書いたメールを送った。
結局、それから父に会うことは二度となかった。