論破王として人気を集める西村博之の妻・西村ゆか氏の家庭環境は想像を絶するものだった。ここではゆか氏の新著『転んで起きて 毒親 夫婦 お金 仕事 夢 の答え』(徳間書店)より一部抜粋。自身が“キングオブクズ”と呼ぶ父の深すぎる闇を明かす。(全3回の3回目/#1、#2を読む)
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キングオブクズな父
高校2年生で父と暮らすことになったときに、祖母は口にこそ出さなかったが、私が父のところに行くことにかなり複雑な思いを抱いていたそうだ。
「あんな人に、ゆかを渡したくない」と、祖母が漏らしていたとあとになって知った。離婚後に、父が私に会いに来たときも、祖母は怒って追い返したらしい。
そんな祖母の思いなど知らずに父のところへ行った私を、祖母はしばらく怒っていた。なぜ祖母が、そんなに怒っていたのか、なぜ父が祖母にそこまで嫌われていたのか、私はよくわかっていなかった。
でも、一緒に暮らして初めて父には深い闇があることが少しずつわかってきたのである。
父に対して私がとくにがっかりした出来事があった。
高校2年生から高校卒業の直前まで父と一緒に暮らしたが、そのころ父にはすごく長く付き合っている女性がいた。
その人は既婚者だったのだけれど、夫とは別居状態だということだった。私より少し年上の息子が2人、娘が1人いて、彼らのために離婚しないでいるらしかった。
その恋人の家族と、父と私で、ある日カラオケに行った。
そのときの父と、3人の子どもたちの仲がすごく良くて、ほんとうの親子みたいだと思ったことを覚えている。場を盛り上げようとみんなで冗談を言い合い、私を楽しませようと気を使ってくれているのも伝わってきた。でも、私はなんとなくその輪の中に入ることができずにいた。
遠巻きに彼らを見ながら、幸せな家族ってこういうものなんじゃないかと感じた。
そして、私の母とは家族を作れなかったけれど、別の人と幸せな家族を築き上げている父に対して、ちゃんとした人間で良かったとさえ思った。
めんどくさくなって恋人と破局
けれど、後日、その考えが180度変わることになる。
別居状態だった恋人の夫が、事故で急死したというのだ。
息子や娘たちには気の毒としか言いようがないけれど、父が結婚することへの障害は、これでなくなったと私は思った。それで無邪気に、「じゃあ、お父さん、あの人と結婚するの?」とたずねた。そうなればいいなと心から思っての言葉だった。