斜視、吃音症、発達障害……人よりもハンデを抱えているにもかかわらず、自らの努力で「サイバーパンクモデル」の道を切り開いた斎藤ゆきえさん。
インタビュー後編では、コンプレックスとの向き合い方や、これからの夢について聞いた。彼女がどうしてもやりたい「2つのこと」とは?(全2回の2回目/前編を読む)
◆◆◆
海外からも認められた「斎藤さんのサイバーコスプレ」
──斎藤さんがXに上げていた写真で、5年前と今のコスプレでは雰囲気がかなり違いますよね。何かきっかけがあったんですか?
斎藤ゆきえさん(以下、斎藤) ありました。最初は頑張ってもなかなか芽が出なかったんですが、その時は「斜視を活かして表現しよう」という反骨心が表に出ちゃったんですよね。“左右非対称”にこだわって「右半分は生身で左は機械」という設定でやっていたんですが、企業のPRモデルの話をいただくうちに「自分が自分が」という気持ちが、少しずつ薄れていったんですよね。
それよりも普通にかっこいいものを着て楽しく明るくやりたい、と自分の中でパラダイムシフトが起きて。そんな時、2021年ごろに、海外のブランドから「SNSで宣伝してくれたら衣装をタダであげるよ」というDMが来たんですよ。それが最近のコスプレで着ているピチピチの全身タイツなんです。
──海外のブランドから声がかかったんですね。
斎藤 そうなんです。ある日、突然長文の英語のDMが来たんです。私、英語が読めないので翻訳機にかけたら「SNSに載せてくれるなら、衣装をプレゼントしてあげる。その代わりうちの公式のInstagramに掲載して良いか?」って書いてあって。
ただ、そのブランドのモデルさんは白人ばかりだったので「私は日本に住むアジア人だけど良いですか?」と送ったら「関係ない。君のそのスタイルがかっこいいんだ」と返信をもらえたんです。あれはうれしかったですね。ブランド公式インスタグラムの日本人の公式モデルは私だけです。
──元々は斜視という自身のコンプレックスを生かす形で生まれたサイボーグ衣装の、ご自身の中の位置づけが変わっていったんですね。コンプレックスとの向き合い方が素敵だな、と。
斎藤 今つけているヘッドセットもそうなんですが、ガンプラを使って作ってるんですよ。そういうコスプレをSNSにあげているうちに、メカ好きな人がフォローしてくれるようになったんです。その人たちって、私がどんな障害を持っているかとか、どんな苦労をしてきたとか関係ない。ただ、目の前の私の格好がカッコいいから褒めてくれる。
だから、みんなが見てくれているものに全力を尽くしたほうが良いな、と思えるようになって。「こういう障害があるから、こういう格好をしました」というのは、質問されたら答えるぐらいで良いかな、と。今は褒めてくれる方に全振りしようと、ファンに支えられる形でコンプレックスから脱却した感じですね。
──今は斎藤さんが製作したサイボーグ衣装を使った、コスプレの撮影会やbarイベントのプロデュースをしているそうですね。モデルさんの中には、顔や体にコンプレックスがある人もいるとか。