「私、老けてる!」家族の記念写真で受けた衝撃
私の四十代後半の知人女性には、小学生の子供が二人いる。上の子供が生まれたときから、一年に一度、写真館で家族写真を撮影し続けている。幸せな家庭はこういうものだと、
「それは記念になっていいわね」
といったら彼女が、
「それが最近、いやでたまらないんです」
と顔をしかめた。夫は記念になると喜んでいるだけだし、子供たちは緊張しつつも、ふだんと違う自分たちの姿を楽しんでいるようだ。しかし問題は母の立場の彼女なのである。
「最初は初めての子供が生まれて、女の子だし記念写真を撮影するのがうれしくてたまらなかったんです。そのためにかわいい服も買ったりして。下の子が生まれると、男の子なのでそれなりにかわいくて。撮影のときも、どれだけ子供たちをよく撮ってもらえるか、そればかりを考えていたんです」
それは母としての当然の気持ちであろうと私はうなずいた。
「でも、今は違うんです」
子供たちが幼いときは、何をさておいても子供が優先になった。ところが四年前、出来上がった記念写真を見て愕然とした。それまでは何とも思わなかったのに、急に、
「私、老けてる!」
と認識したというのだ。子供の成長と共に、親が歳を取るのは当たり前だが、彼女は、
「歳を取ったんじゃなくて、明らかに老けていたんですっ」
といい放った。たしかに前に比べれば、ちょっと皺も増えたし、顔だってたるみ気味になった。それは五十代を目前にした世の中の人、ほとんどがそうなのだ。衝撃を受けた彼女は、よせばいいのにこれまでの記念写真を、ずらっと並べてみた。そこで二重にショックを受けた。
「自分が鏡を見たときに、老けたと感じるのと、記念写真で毎年、見せつけられるのとでは全然、違うんです。その残酷さといったらないんです」
生物は老いるものであるから、それは仕方がないのではと慰めても、
「絶対にいやだ」
と彼女はいう。自分が想像していたよりも、老ける度合いが早かったのが、我慢できないというのだ。