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不満爆発の彼女が取った行動

 そして彼女は思い切った。記念撮影のときに、子供を切り捨てたのである。それまでは、

「子供たち、かわいく写ってますか」

 とカメラマンに何度も確認していたのに、衝撃を受けてからは、子供なんかどうでもよくなり、どうやったら自分が若く細く写るかだけを考えるようになった。なるべく細く見えるように、椅子に座った子供たちの脇で、体を正面に向けずに斜に構え、顔もむきだしにならないように横向きにしていると、

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「お母様、もうちょっとお体とお顔をこちらに向けていただいて」

 とカメラマンに指示される。しかしそれも頑としてつっぱねるので、撮影時にはカメラマンと攻防が繰り広げられる。

「でも記念写真って、みんなのありのままの姿を撮影するものでしょう」

 私がそういうと、彼女の顔は暗くなり、

「そのありのままの姿っていうのが、いやなんです。もう記念写真なんてやめたいです。これ以上、自分が老ける姿を延々と晒し、おまけに末代まで残すのはいやです」

夫の反応

 自分の気持ちを夫にぶつけると、

「そんなことないよ、よく撮れてるよ」

 といってくれた。いい夫である。

「よく撮れてるわけがないです。あの人はそういわないと、どうなるかがわかっているから、私の機嫌を取ろうとしただけですよ」

提供:アフロ

 記念写真は室内できちんとライティングしてくれるので、顔の影はできないけれど、陰影が感じられない、のっぺりとした特殊な写り具合になる。それが写真館で撮影する、記念写真の王道といえなくもない。

「私の顔、ただでさえ凹凸がないのに、真っ平らに見えるんです。ヘアメイクもしてもらったのに、写真をみると明らかにしみ、皺、たるみの顔の変化がわかるんです。絶対に二割方、顔もたるんで太って見えるんです!」

 カメラマンの腕がいいのか悪いのか、私にはわからない。ただ私より若い世代は、プロに写真を撮ってもらうとなると、まずファッション雑誌のグラビアを、思い浮かべてしまうのではないかと思う。

 家族と一緒の喜ぶべき記念写真でも不満が爆発。被写体をどう写そうかと考えるよりも、とにかく写真を撮れば仕事が終わると、カメラマンがライティングを無視して撮影すると、目の下、頰の下に影ができて、子泣きじじいができあがる。更年期の女性はどうやって写真に写ればいいのだろうか。現実を見よという声もかすかに聞こえるが、それも含めて、

「何と難しいことよ」

 と私はため息をついたのである。

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群 ようこ

文藝春秋

2018年2月9日 発売