2023年は、ChatGPTに代表される生成AI(人工知能)が生活や仕事の場で急速に普及し、AIブームが起きた。今後、生成AIがさらに躍進し、産業界だけでなく、働き方や消費の行動に大きな変化が起こるという予測もある。こうした流れのなかで、2024年はどんな年になるだろうか?

 ここでは、朝日新書の新刊『人類の終着点――戦争、AI、ヒューマニティの未来』より一部を抜粋。ニューヨーク・タイムズの記者、スティーブ・ロー氏が生成AIの可能性と今後の展開について語った内容を紹介する。(全2回の1回目/2回目に続く)

写真はイメージです ©アフロ

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テクノロジーは何をもたらすのか?

――2022年11月にChatGPTが登場してから、全世界が生成AIに注目するようになりました。ベテランのテクノロジー記者のあなたに、今のAIの現状と今後の可能性、そして私たちがどう付き合っていけばいいかについてお伺いしていきます。まずは、ChatGPT発表以来の状況、AIに関する議論について、どう見ていらっしゃいますか。

 歴史は繰り返すものではなく、「韻を踏むもの」だと言われています。かつて、1990年代に商業化されたインターネットも、巨大で重要なテクノロジーと言われていました。その際にもメディアや小売り業、広告業界などを、混乱の渦に巻き込むだろうとうわさされていました。そして、実際にそうなりました。

 10年後にITバブルが弾けると、新たなテクノロジー改革も進みました。そして現在では、高速通信が普及し、デジタル決済が一般化し、ストリーミング視聴が当たり前になっています。

 このように、新たなテクノロジーが登場して普及するまで――熱狂的に迎えられてから実用化されるまで│には、時間差が生じます。過去の蒸気機関、電気、インターネットといった発明と同じです。

サム・アルトマン氏が非公開の場で語ったこと

――このような情勢の中、あなたは、渦中の人物でもあるChatGPTを公開したOpenAI社のサム・アルトマンCEOに最近お会いしたと聞きました。どんな状況で話をして、彼に対してどんな印象を抱きましたか。

 サムと会ったのは、『ニューヨーク・タイムズ』紙の編集主幹たちが、サンフランシスコで開いた会合の席でのことでした。