1ページ目から読む
3/4ページ目

 AIツールが仕事を根本的に変えるのは、まだ先の話でしょう。しかし、医療や法律の分野では、新たな技術の活用を模索している人たちもいます。

 新技術を賢い相談役として用いて、「多くの文献を読む」など1人では無理なことをやってくれて、「こんなことも考えてみたらどうか」と助言してくれることを熱望している医師も少なからずいます。

 日本が抱える少子高齢化問題は米国にはありません。しかし、生産性を高め、自動化をさらに進める必要があるのは、同じなのです。労働力不足は世界共通の深刻な問題です。

ADVERTISEMENT

写真はイメージです ©takasu/イメージマート

新しいテクノロジーが社会問題を解決する糸口に

――日本のような高齢化社会では、1人暮らしの高齢者が増える一方です。その中には、孤独を抱える人もいます。生成AIのような新しいテクノロジーは、孤独を癒す助けになることもあるのでしょうか。

 実は、その点はすでに実験されています。数年前には映画にもなりました。『her/世界でひとつの彼女』はまさにそれです。それに似たサービスはすでにあります。こうしたサービスの開発を担っているのは、主に若い人たちです。

 また、精神衛生学の分野では、認知行動療法を自動化し普及するためのソフトウェア開発も行われています。あなたが言われるような「孤独の問題」に関してですが、こうした分野のものが便利な話し相手となり得ます。

 これによって高齢者の孤立の問題がすべて片付くわけではありません。しかし少なくとも、1つは解決されるでしょう。この分野には大きな可能性があり、様々な取り組みがなされています。

AIが影響を与えるのは「4つの分野」の雇用である

――ここで一度、雇用問題に話を戻します。AIが雇用に与える影響について、あなたは様々な取材を重ねてきたと思います。そのうえで、どんな分野の雇用が影響、もしくは痛手を受けるのでしょうか。

 私が関心を持っているのは、影響が及ぶ範囲についてです。

 マッキンゼーの調査によると「最も影響を受ける分野が4つある」と言います。それは「カスタマーサービス」「マーケティングと営業」「ソフトウェア・エンジニアリング」それに「研究開発」の4つの分野です。

 その特徴を挙げるとするならば、「賃金が一番安いところ」と「一番高いところ」と言えます。カスタマーサービスとは、コールセンターを指します。この分野は、自動化が進みつつあります。

 コールセンターの仕事はきつくて離職率が高い。ですから、自動化が進むのは必ずしも悪いことではない。有効な手段と言えるでしょう。