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 人と接するような仕事では、いろいろな技能を組み合わせることも求められます。典型的な例が、カスタマーサービスです。アメリカでは、コールセンターで200万人以上が働いています。チャットボットがすごく優秀であれば、近い将来、こういった職場に進出してくるかもしれません。

 企業はカスタマーサービスの電話応答の自動化に取り組んできましたが、――定型文を読み上げるだけの初歩的なものを除くと――あらゆる電話に応答するのは、現時点では、AIの手に余ってしまうことがわかってきました。

今後さらに仕事の自動化が進む

 このように現段階では、インテリジェント・アシスタントは人々を失業に追い込むというよりも、助けている段階です。状況を見極める必要があるでしょう。タイミングと進歩の速度によるところが大きいですからね。そのあたりはまだよくわかっていません。初期の恩恵は過大評価される傾向もありますし。

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 その典型的な一例が、自動運転車です。10年前には、街中が自動運転車だらけになると予測されていました。しかし、自動運転車はテストコースで走ることができても、市街地や高速道路となるとまだ話は別なのです。「信号無視」や横断禁止場所からの飛び出しなどの予測不能な事態を認識することは、人間だってかなり難しいです。

 長い年月をかけて行われてきた仕事が自動化されていくのは、今後さらに進んでいくでしょう。農業を例に挙げれば、世界中で――とりわけ先進国では――20世紀初頭の農業従事者数のわずか数%の人たちによって、当時よりもより多くの農産物を生産しています。製造業でも同様です。雇用数は減っていますが、生産量は増えています。

実は言われているほど、AIは賢くない

――ChatGPTをはじめ、グーグル、マイクロソフトなども様々なAIツールを相次いで発表しています。AIツールを使ううえで、注意すべきことはありますか。

「信用しすぎるな」ということです。古い言い回しになりますが、「導かれても、支配されるな」と。AIツールは見た目ほど優れていませんし、賢くもありません。しかし、役に立つのであれば、ぜひ試してみてください。

 たとえば医師の場合では、患者の症状や検査結果をChatGPTに丸投げし、「診断して」と頼むことはできません。現在、米国ではHIPAA法(医療情報の電子化の推進およびプライバシー保護やセキュリティ確保について定めた法律)に抵触しない範囲で、AIツールをどう使うかが模索されています。