高齢のラットの脳が、性行為で若返った!
では、脳と性行為の関係はどうなっているのでしょうか。
一般に運動は、ストレスホルモンの分泌を促す(体に負担になる行為ではあるため)一方で、長期的な健康効果があり、学習能力や記憶力が向上する、という効能があります(詳しくはこちらの記事を)。
では性行為はどうなのでしょう。
ここで、ラットによる実験の結果を記します。
・雄のラットに、発情期を迎えた雌のラットと、1度だけ交尾をさせると、雄のストレスホルモンは上がる一方、脳内の細胞が増えた。つまり、ストレスはかかるが、脳に良い影響がある。
・雄のラットに、発情期を迎えた雌のラットと、何度も交尾ができる環境を作ると、1度だけのときと比べてストレスホルモンは減り、脳内の細胞はより増えた。
・高齢のラットが2~4週間、毎日欠かさず交尾をすると、同じ状況にある若いラットと同程度、脳内の細胞が増えた。
つまりラットの場合、年齢に関係なく、性行為による脳へのよい効果はある、ということなのです。
パートナーとの親近感で、効果が変わることも判明
それでは、人の場合は?
2016年、オーストラリアで50歳以上の6000人分のデータを分析して、中高年以上の性行為が脳にもたらす影響を調べた研究結果は、こういうものでした。
・人との交流が深まる性行為が、認知力低下を防ぐ。
・性行為による脳への健康効果(神経発生を促すホルモンであるオキシトシンの分泌量)は、パートナーへの愛着や信頼があればあるほど増える。
ラットによる実験結果と同じような効果が見られただけでなく、パートナーとの親密な度合いもその効果に影響することがわかってきたのです。
他にも、性行為と脳の関わりについてわかっていることはたくさんあります。
・年齢に関わりなく、性的に活発な人の方が記憶力がよい傾向にある。
・定期的に性行為を行っている50~89歳の人は、そうでない人より、知能検査の成績がよい(女性は記憶力テストで、男性は記憶力テストと数学テストで高得点をとる)。
・性交の頻度は、言語能力の高さと関連している。
・主要な性ホルモン(テストステロン、エストロゲン)は、生涯を通じて脳に有益で、脳を守ってくれる。
ここに挙げたのは一部でしかありません。併せて本書では「性行為と脳の健康のためにすべきこと」というリストが紹介されています。
性行為、「愛のある」セックスこそ、脳に効くのです。