店主は鹿児島県枕崎市出身で、飲食店の経験もある。地元の鰹節にこだわって出汁を調達したそうだ。醤油も口当たりの良いものを選び、返しを完成させたという。「つゆはとにかくこだわりました」と渾身の味に仕上げているとか。
奥さんはサイドメニューを中心に手作り感を大切にしているという。接客は居酒屋の時と同じなので全くスムーズである。
綺麗な美味いつゆに立体的なかき揚げ
さて、注文したそばが登場した。焦茶色の縁の陶器のどんぶりに、ふくよかな色のつゆに細身のそばが泳ぐ。真っ白な「とろろいも」に、高さ5センチはあろうかというかき揚げが鎮座している。なかなかそそる姿である。まずつゆをひとくち。出汁はじんわりとよく利いて、返しも強すぎることはない赤味の綺麗なつゆである。主人が渾身のつゆと言っているのもよくわかる。
そばは細身でコシもありなかなか良い。そしてかき揚げは高さのある立体的なタイプだ。中までしっかり熱が通っていてカラッと揚げられている。これは「かき揚げ丼」で食べても美味いに違いない。
つゆのバランスを試行錯誤
「だし巻きたまご」はしっとりとして甘味は少ないタイプ。好みの味である。「塩むすび」はアツアツの握りたて。塩味もしっかり。「とろろいも」もしっかりとしたタイプでつゆに溶かしてそばと絡めて食べていく。
菊永店主はつゆの出汁や醤油はすぐに決まったが、つゆの濃さつまりバランスでずいぶん試行錯誤したそうである。オープン当初は濃く甘い関東風のつゆにしていたが、どうもバランスが良くなかった。そこで返しの割合を減らしてやや関西風のつゆにしたところピタッとハマった味になったという。今のつゆなら、朝から食べても体に沁みわたるよい塩梅だ。