それで結局、私はなんの反撃もできず、契約を解除された。
守ってくれなかったひろゆき君にすごくがっかりしたし、裏切られたという思いが消えなくて、しばらく彼とは口も利かなかった。
でも、この一件から私は、ひろゆき君と生きていくためにすごく大事なことを学んだのだ。
「ひろゆきは、データがないと私を守らない」
そして、こうも考えた。今回みたいなことって、ほかの仕事でも起こり得るんじゃないかと。
口頭でそんな約束をしてしまった時点で私の負けだったのだ。
これは、フリーランスとして生きていくために大事な教訓だった。
そして、二度と同じミスは繰り返さないと心に誓った。
大事な人を守らないひろゆきから妻が学んだこと
ちなみに、この話を誰かにすると「ひろゆきさんは大事なことをゆかさんに教えようとしたのですね。そんなひろゆきさんに、ゆかさんは感謝しているのですね」とか言ってくる人がいるけれど、それは絶対に違う。
いまでもこの一件を思い出すと、腹が立って「あのときなぜ助けなかったああああ」とひろゆき君につかみかかりそうな勢いである。でも、何事もすぐに忘れるのが特技の彼は、たぶんとっくに忘れているのでそんな無駄なことはしない。
でも、読者のみなさんがわかってくれたらうれしい。
ひろゆき君が教えてくれたんじゃないの。
私が自力で自衛を学んだだけなの。
数年後、私は、別の仕事で、別の人から同じ目に遭いそうになったが「口頭ではなくメールでお願いします」と速攻で返した。そして、契約満了まで無事に働いた。
さらに良かったのは、同じ目に遭いそうになっていた、若手のデザイナーを守ることもできたということだ。彼女もちゃんと次の仕事を見つけるまで、その会社で働くことができた。
なにが言いたかったかというと、ひろゆきはヒドイ……じゃなくて、人の善意につけ込むやばい奴はどこにでもいるということ。そのための自衛は怠ってはならないということです。
Webディレクター
1978年、東京都生まれ。インターキュー株式会社(現GMOインターネット株式会社)、ヤフー株式会社を経て独立。現在、フランス在住。著書に『だんな様はひろゆき』(原作・西村ゆか/漫画・wako)がある。