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 後にサトルさんの告別式が開かれた時、集まった同級生たちは口々にA教諭の責任を糾弾していた。「A、出てこい」「A、許さない」「A、逃げるな」と、遺された生徒たちの叫び声が響き渡ったという。

生前、緑が好きだったというサトルさんの仏壇

 しかしサトルさんの死後、学校は遺族に説明も相談もなく、報道機関に対し「進路に悩んでいた」と説明していた。

「息子は成績も上がっていて、進路に悩んではいませんでした。『(進学を希望する高校の)寮の目の前が海だから、休みの日は釣りができる。僕は船の免許を取って船を買う』と友人にも話しており、夢を持っていました。勝手に我が子が進路に悩んでいたなどと言われ、この時はもう不信感が増すばかりでした。何があったのか事実を知らなければいけないと思うようになりました」(アカネさん)

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亡くなったサトルさん(仮名)

A教諭は市の教育委員会の別の部署に異動

 後に発表された調査報告書では、A教諭の指導について、「自死に影響を与えた可能性は否定できない」と、因果関係を示唆している。

 その上で、(1)大声などで生徒に恐怖感情を与え、教師の意に沿う行動をさせる指導、(2)宿題を自宅にとりに帰らせる指導、(3)スタンプラリー(同じ件について1人の教師からの指導が終わるとサインをもらい、さらに別の教師からの指導を次々と受けていく仕組み)、などは改善すべきとしている。

 教師による不適切な指導について、文部科学省は近年課題意識を強めている。2022年12月には、生徒指導の基本書「生徒指導提要」も改訂されている。

 その中の「懲戒と体罰、不適切な指導」の項目では、「大声で怒鳴る」「感情的な言動で指導する」など7つの具体例が掲載され、「不適切な指導等が不登校や自殺のきっかけになる場合もある」と記された。

 さらに、2022年度の「児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査」でも、「自殺した児童生徒の状況」の項目に「教職員による体罰、不適切指導」が加わっている。

 サトルさんの担任だったA教諭は市の教育委員会の別の部署に異動した。裁判所は、A教諭の責任を認めるのだろうか。次回の口頭弁論は4月18日に開かれる。