さすがクドカン。第一話が放映されたとたんに、視聴者の心を掴んだ『不適切にもほどがある!』だが、共感の輪は広がるばかり。
昭和六一年から令和六年にタイムスリップした高校教師の小川市郎(阿部サダヲ)が、昭和と令和のギャップに戸惑いつつも、意外やタフに順応していく。
西暦なら一九八六年から二〇二四年への時間転移だ。元号と西暦が共存するニッポンって案外と便利だ。六〇年代ロックっていったり、昭和の高度経済成長期とかまとめたりね。
“地獄のオガワ”と呼ばれ、野球部顧問として部員に尻(ケツ)バット。旧帝国軍隊と同じだ。女の裸は大好きで、エロい言葉も平気で口にする。その小川が、コンプラ遵守、ジェンダー平等の建前が横行する令和で、「それ、おかしいぜ!」と偽善を暴く姿に、視聴者は老若問わず爆笑だ。
“意識低い系タイムスリップコメディ!!”と銘打たれたドラマだが、意識高い系ですよ。おまけに“泣かせる系”だから最強だ。
妻と死別した小川には、高校生の娘、純子(河合優実)がいる。昭和のスケバンをさらに誇張した長いスカートにどぎついメイク。父を「ハゲでチビでデブ」と罵り、小川も「このアバズレ!」と怒鳴り返す。
そんな不良娘が、じつは親父思いで、妻を失いメゲてる小川を元気づけるためアバズレを演じてる。
可愛い子なんだ、純子ちゃん。演じる河合優実は、いま若手女優の最注目株で演技力には定評があった。しかしこのドラマで、アバズレなのに心優しく、親と家族を大切にする娘を演じて、一躍その名は全国区になった。ドラマ『家族だから愛したんじゃなくて、愛したのが家族だった』での存在感も圧倒的だったし。
クールで媚びない表情が山口百恵に似ているという人も多い。私は若いときの中森明菜か三原じゅん子と重なるんだけど。昏く情熱的で愛想笑いなど浮かべない河合優実にやられたよ。
令和にリープした市郎はTV局勤務の犬島渚(仲里依紗)に好意を抱き“チョメチョメ”しようとしたら電気がビリビリ。キスも胸も触れると痛いほどビリビリ!! なんだ、これは。どうも歴史が変わるタイムパラドックス防止のための現象のようだ。
渚が市郎に、父(古田新太)を紹介したことからビリビリの謎が判明。渚は純子の娘だった。ということは渚は孫だ。孫とチョメチョメは歴史が変わる。
そして純子が市郎と死んだのが一九九五年一月一七日の神戸。阪神淡路の大震災だ。娘を抱いた純子を救っちゃいけないのか? 俺は忘れられたSF作家だが、歴史改変しても、いいと思う。ユー、変えちゃいなよ。純子も市郎もパラレルワールドで生きてる。そんな家族の話が観たい。
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『不適切にもほどがある!』
TBS 金 22:00~
https://www.tbs.co.jp/futekisetsunimohodogaaru/