矢埜 私は緊張していたんですけど、母はそのときは「セクシー女優~? なにそれ~? がんばって~」みたいな感じでした(笑)。

 ただ、翌日には「どういうこと? セクシー女優って出てきたんだけど」と、めちゃくちゃ真面目な長文LINEが来ましたね。それから、自分の考えを改めて伝えて、結果的には「自分のやりたい仕事だったら頑張りなさいよ」と言ってくれました。

 デビュー後も、これまで通り日常的なLINEをやり取りしていますし、“見守ってくれている”んだと思います。

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「私はそこが本当にしんどくて…」

――先ほど話に上がったAV新法についてですが、契約から最短5ヵ月間は熟慮期間として、情報を公表できない決まりになっていますが、この期間はどのような生活、心境だったのでしょうか。

矢埜 私はその期間が本当にしんどくて……。

 前田美里(注:矢埜愛茉の以前の活動名)としての活動をしながら同時進行で撮影を進めていたので、ずっと応援してくれていたファンの方にも、今私がやっていることだったり、やろうとしていることを隠さなきゃいけなくて、それがきつかったです。どうしても後ろめたい気持ちになってしまうじゃないですか。

©文藝春秋

「どう思われるんだろう」「作品が売れなかったらどうしよう」といった不安も、もちろんありました。色んな気持ちがゴチャゴチャしていたので、姉に話を聞いてもらってなんとか自分を保つような状態でしたね。

――そうした日々を乗り越えて情報解禁を迎えた日。矢埜さんのXでのポストが大きな反響を呼びました。

矢埜 運良く初めてバズりを体験できました(笑)。

 おかげさまで、世の中の方々に矢埜愛茉という名前を知ってもらえましたし、周りからたくさん連絡が来てありがたかったです。

矢埜愛茉「 X(旧Twitter)」より

 なかでも、昔舞台で共演したことのある女性から「文章にすごく感動した」「これまで頑張っているのを見ていたし、これからも応援します」と連絡をいただけたのには感激しました。「素直に書いた気持ちがちゃんと伝わった……頑張っていこう!」と思いましたし、なんでしょう、自分の気持ちを正直に伝えることの大切さを痛感した出来事でしたね。