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 球団とトレーナー陣は将来を考え、無理をすべきではないという考えで一致。大谷の本心を探るために、白水氏が“派遣”された。大谷と2人きり。白水氏はその時のことが忘れられないという。

「トレーナーとして今、無理をするタイミングではないと思う。次の大会には出場できる。どう思う?」とチーム方針をやんわり伝えた。大谷は「それは全然、チームに任せます」。驚くほどあっさりした答えは、白水氏への信頼が厚いからこそだった。

大谷が「分かっていますよ! だけど、できないんですよ!」と声を荒げたワケ

 だが、その右足首の故障で大谷が一度だけ、怒りをぶちまけたことがあった。同年シーズン中盤の福岡遠征での、栗山監督、白水氏が見守ったブルペン投球。投球時に軸足の右足を強く蹴れずに浮いてしまい、体重が前に乗らない状態が続いていた。

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 球離れが早く最後のひと押しが出ない。白水氏が「前に入っていく動きを出そう。そのほうが前に力が伝わると思うよ」と言うと、大谷が声を荒らげた。「分かっていますよ! だけど、できないんですよ!」。

 栗山監督も「あんなあいつは見たことねえな。それくらい悔しさとかあったんだろうな。でも、信頼する人にしかああいうこと言わないから」と回想する出来事だった。

栗山英樹監督 ©文藝春秋

 当時、登板翌日でも、休日でもジムでのサポートを頼まれ「そこまで継続している選手はいなかった。完全にメジャーや、その先を見ていた。フィジカルがないと間に合わない。あの時から逆算が始まっていた」と白水氏。

 メジャー移籍前の2017年終了後に右足首を手術し、痛みは完治した。出場辞退から6年。大谷の悔しさを知る白水氏にとっても悔しさを晴らす舞台となった。