2人は殺害の決意を固め、門田さんに「最後に何を食べたい?」と聞いた。門田さんが「シャケのおにぎり」と答えたので、コンビニまで買いに行った。
同年3月15日、天池は山下の指示で門田さんの頭にビニール袋をかぶせ、首の部分をガムテープでグルグル巻きにした。だが、門田さんは息が荒くなるだけで死ななかったので、山下が後ろの座席にやって来た。
「あれ取って」
天池は運転席にあった延長コードを手渡した。
「お前は周りの様子を見とけ。耳をふさいでろ」
それでも門田さんが苦しむ声や歯ぎしりする声が聞こえてきた。天池は山下に脈を診るように頼まれ、死んでいるのが分かった。愛知県東浦町のコンビニの駐車場で「化粧をしてあげて」と頼まれ、門田さんに死化粧を施した。
「2人は遺体の遺棄場所を探して天池の出身地である岐阜県関市、下呂市、郡上市、高山市などを転々。適当なところが見つからなかったので、山下の出身地である愛知県東浦町の畑地に埋めることにした。シャベルは山下の自宅から調達した。山下は門田さんを全裸にしてマスクをつけ、畑地まで引きずって行き、天池と協力して掘った穴に遺体を埋めた。その後、2人は何度も現場に戻って、異常がないことを確認した。凶器として使った延長コードや門田さんの長袖パーカー、長袖服、長ズボンは川や海に捨てた」(捜査関係者)
「自分がやったことは悪いことだった」と供述
天池は事件後も売春を繰り返し、山下と車で放浪生活していたが、同年4月3日、A子さんに対する監禁や強制性交等の疑いで愛知県警中村署に逮捕された。調べに対し、山下は黙秘したが、天池は「重要なことがあるんですけど、話を聞いてもらえますか」と言って、門田さんを殺し、愛知県東浦町の畑地に埋めたことを自供した。翌日には現場を案内し、門田さんの遺体を掘り起こした。
この点について天池は公判で次のように述べている。
「死刑になっても無期懲役になってもいいと思った。時間が経てば骨になる。そうすると解剖も難しくなる。山ちゃんから離れてホッとした。自分が連れ出さなければ、事件は起きなかった。自分がやったことは悪いことだった。早く家族のもとに帰ってほしいという思いがあった」
2024年3月15日、名古屋地裁の森島聡裁判長は「知的障害があるものの、自ら合理的な行動を取るなど、完全責任能力があった。山下被告に支配されていたと主張するが、必ずしも完全に支配されていたとは認められない。A子さんに対する犯行は、前科の事件を踏襲するようなもので反省もない。門田さんへの暴行の発覚を恐れて殺害を決めたことは、自己中心的かつ短絡的だ」と断罪し、天池に懲役16年を言い渡した。
まさに最悪の男女コンビだが、山下の公判はまだ決まっていない。